世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「矢野監督よ、交流戦は腹をくくれ!」

 阪神は相変わらず波に乗れない試合が続いているけど、まだ上位浮上のチャンスはある。開幕直後は首位独走の勢いだった巨人が失速し、首位争いをするヤクルト、広島にしても抜け出しそうな強さは感じない。阪神がこれだけモタモタしていても、首位とはまだ10ゲーム差ほど。これはラッキーと思わないといけない。まずは10以上ある借金を前半戦で「5」に減らすことができれば、3位以内どころか、その上まで見えてくる。

 開幕9連敗のあと1勝だけして、再び6連敗の歴史的なズッコケとなったが、その後は何とか勝率5割以上で来ている。先発陣の安定感は戦前からの予想通り12球団でも屈指やと思う。青柳、西勇輝の2本柱だけでなく、ガンケル、ウィルカーソンの外国人もきっちり試合を作る。高卒3年目の西純矢も力のあるストレートを投げて、ローテーションで回れるだけの投手に成長してきた。2年連続2桁勝利の秋山や藤浪も、結果を残さないと座る椅子がないほど、ぜいたくな布陣となってきた。

 勝てない理由は誰が見てもわかる。投手陣は3点以内に抑えているのに、打線があまりにも打てなさすぎる。チャンスを作っても「あと1本」が出ない。これは開幕からずっと続いていること。特に頑張らないといけないのが大山。2年目の佐藤輝は何やかんや言われながら及第点の成績を残している。1、2番の近本、中野は黙ってても数字を上げてくるし、3番のマルテも足の故障から戻ってきた。4番の佐藤輝までは固まっているから、あとはほんまに大山の活躍次第となる。

 大山はずっと言い続けていることやけど、内角の真っすぐを打たないとダメ。打てないまでもファウルで逃げて、甘い球を仕留めるようなスタイルにしないといけない。変化球にヤマを張ったようなタイミングでストレートに差し込まれることが多すぎる。確かに、チャンスで甘いストレートはなかなか投げてこないけど、へんに相手バッテリーの配球を考えないほうがいい。内角高めのストレートにタイミングを合わせて、変化球に対応する基本に戻らないと。そろそろ目を覚まさないといけない。

 交流戦になれば佐々木朗希や千賀、山本由伸とパ・リーグの力のある投手と顔を合わせる。セ・リーグの投手以上に内角にドンドン突っ込んでくる。速い球に照準を合わせ、シンプルに打ち返すことだけを考えたほうがいい。今年で6年目。毎年、同じやられ方をしていたら、来年から新しい監督のもとでは働き場所がなくなるかもしれない。何番を打たされても、守備位置をコロコロ変えられても平気な顔をしている。内心はわからないけど、危機感を持ってプレーしてほしい。

 だが、ベンチも三塁、一塁、左翼と大山の守備を変えすぎ。もし僕が大山やったら、本職以外で使われるなら「休ませて」と言う。慣れないポジションで神経を遣うと、リズムも崩れるし、打てるものも打てなくなる。僕はセンターからレフトに回るだけでも嫌やったから、内野から外野となればなおさら。大山だけでなく、佐藤輝も三塁か右翼か、いい加減固定してあげたほうがいい。打線の調子が上向いてこないのは、守備位置が固定できないことも大きな要因。上位との差を詰めるチャンスとなる交流戦のキーマンは大山。矢野監督は腹をくくった起用をするべきやと思う。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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