水産庁は3月7日、これまで8~12月に限定していたサンマ漁の期間を通年で操業できるように変更すると決めたという。
ここ数年、サンマは不漁が続いており、“豊漁”と言われた昨年でさえ水揚げ量は11万トンで、30万トン以上あった2008年の3分の1にまで落ち込んでいる。そのため、安定して水揚げできるように漁の期間を限定しないことに決めたのだ。
「水揚げ量が激減した理由は2つ考えられ、1つは海水温が上昇したためにサンマの回遊ルートが変わり、漁場が沖合に移動して日本の漁船が捕りに行きにくくなったこと。もう1つは、中国や台湾の爆漁とされています。中国・台湾ではもともとサンマを食べる文化がなかったのですが、最近は日本食ブームでサンマが広く食べられるようになり、加えて韓国などへ輸出量も増加しているんです」(グルメ雑誌ライター)
サンマ漁の通年操業解禁のニュースにネットでは、《もうサンマを秋の味覚とは言えなくなるのか…。なんか寂しいな》《旬がなくなるなら、そこまで頑張って食べない気がする》など、“秋の味覚”ではなくなることを嘆く声も多かったが、それ以上に懸念されることがあるという。
「このままでは、サンマが絶滅危惧種に指定される可能性があるということです。通年操業解禁により、日本は北太平洋の公海に出てどの国よりも先にサンマを捕りに行くことになりそうですが、そうなると中国・台湾も漁船を増やしたり設備を整えるなどして対抗策を講じることになる。結果、さらなる乱獲につながってしまうことも考えられるのです。海洋環境の変化でサンマの資源量が減少しているにもかかわらず乱獲を続ければ、クロマグロと同じように絶滅危惧種となり、元も子もない状態になりかねないのです」(海洋学者)
水産庁は昨年、日本や中国、台湾を含めた8カ国が加盟する北太平洋漁業委員会でサンマの漁業規制を提案したが、国際合意が得られなかった。
「今回の規制緩和は、そうした状況を受けての強硬手段とも取れますが、漁業関係者がひとまず胸を撫でおろす一方、先々には他国との共倒れが待ち受けているかもしれません」(同前)
確かに、そうなると“秋の味覚”云々どころではない。
(小島洋三)