ガタガタになっていると伝えられるロシア兵の士気を高めるため、いよいよ冷酷非情の総司令官がウクライナに投入されたようだ。
英BBC放送は9日、クリミア半島や南部チェチェン共和国などを管轄するロシア軍の南部軍管区トップであるアレクサンドル・ドボルニコフ上級大将が、ウクライナ侵攻の新総司令官に任命されたと伝えた。同氏は、ショイグ国防相らと並ぶ階級にあり、2015年からのシリア軍事介入の指揮を執り、市民の犠牲を顧みず、弱体化したアサド政権の形勢を挽回させた人物だという。
「ドボルニコフ氏がウクライナに投入された最大の理由は、ズバリ、短期間での戦闘部隊立て直しです。プーチンは5月9日の旧ソ連による対独戦勝記念日に向け、なにがなんでもウクライナ侵攻で『勝利宣言』を出したい。ところが、そのためにはウクライナ東部のルハンスク(ルガンスク)、ドネツクの2州の全域を制圧し、『戦果』を示さなければなりません。しかし、現在のロシア軍は兵士の士気低下や装備の消耗が続き、任務達成は容易でない。そこで、プーチンの最終兵器として送り込まれたのが、ドボルニコフ上級大将だったというわけです」(軍事ジャーナリスト)
現在、ロシア軍は東部の戦力を増強するため、首都キーウ(キエフ)攻略作戦に参加していた兵士をロシア国内にいったん後退させ、再び戦線に送る準備を進めていると伝えられるが、そんな中、再び戦地に駆り出されることから逃れるため、兵士たちによる自傷行為が後を絶たないというのだ。
「ウクライナに派兵された兵士の中には、ただの軍事訓練として連れてこられ、そのまま前線で戦い続けている兵士も少なくない。しかも、十分な防寒装備がないため、戦地では多くの兵士が凍傷になり、そんな悲惨な現実を目の当たりにすることで、精神に支障をきたす者も多いと言われます。ところが、脱走すれば最大で8年の懲役刑を受ける可能性があるため、それもできない。そこで兵士の中には、上官や仲間にバレないよう銃で自分の足を撃ち抜き、病院送りにされて出兵を逃れる者も増えているそうです」(同)
それが事実なら、もはや戦うどころではない気もするのだが、英デイリーメール(3月22日付)によると、そうしたロシア軍兵士らの不穏行動を取り締まるためにチェチェン民兵隊がウクライナに派兵され、戦線から逃げる兵士は射殺する命令が下されたというロシア兵捕虜の証言を伝えている。
「これは、まさにスターリンの恐怖政治時代に実行された刑罰戦術。これが復活しているとすれば恐ろしい事態も予想されます。恐怖や自暴自棄になった兵士たちの間にドラッグが蔓延し、ハイになって同士討ちしてしまうこともあったと言われますからね、まさに地獄絵図です」(同)
英国防省は10日、ウクライナの隣国モルドバの親露派地域で、ロシアが兵員確保のため、雇い兵を募集する動きがあるとの分析を明らかにしたが、冷酷な総司令官投入でロシア兵たちの運命は……。
(灯倫太郎)