創業は1968年、今や全国に42店舗を構える「ラーメン二郎」。メディアの取材を断り続けてきた創業者の山田拓美氏が、3月31日深夜放送の「NONFIX」(フジテレビ系)に出演。「ラーメン二郎という奇跡 〜総帥・山田拓美の“遺言”〜」と題して、「最初で最後」となる密着VTRがオンエアされ、これまでの歴史や行列店の知られざる日常が紹介された。
今でこそ東京・三田に本店を構えているが、その原点は都立大学駅前にあった。インタビューで山田氏は和食の板前をやっていたものの、上司と衝突して退店。商売を始めようかと思っていたところ、都立大学駅前に「1坪半5席」の物件があることを知ったという。
「オレ、酒を売る商売やったら絶対カラダ壊して死んじまうから、酒を売らない商売にしようと思って」と、賄いで食べたラーメンを思い出して、ラーメン店の出店を決意。いざ開店したものの、当初のスープは「どんぶりの底が見えるような薄い、和食の…」と明かし「ぜんぜん売れねえよ」と苦境を振り返った。
店を閉めようかと思っていた頃、雪印乳業で働いている人間がやってきて、「こんな不味いラーメン食ったことないよ」「(北海道のラーメンは)もっとスープは濃くして丼も大きくして麺ももっと多いよ」と助言し、山田氏は味の変更を決意。肉屋から「出世払い」で骨とガラを原価で譲ってもらい、「やけくそ」の気持ちで、丸3日間スープを煮込んだ。麺も太くして「1杯100円」で提供し始めたところ、「5人しか座れない席で1日150食くらい売った」と語った。
そこでVTRは切り替わって、都立大学駅前のロケシーンに。山田氏はかつて店があった場所を訪ね、「この美容室は昔からある」と古くから営業する美容室を指さして、こう続けた。
「この美容室の友達が漫才のおぼん・こぼん。おぼん・こぼんは大阪から出てきて同級生がここ(美容室)で働いてて、毎月毎月2人で髪の毛を切る練習に来てた。で、練習来て、オレんちのラーメン食って『出世払い』って金を払わないで、あいつら帰るんです」と笑いながら語った。どうやら現地を訪問し、美容室を見たことで、50年以上も前の記憶がよみがえったようだった。その後、都立大学駅前の店舗は立ち退きになったものの、当時の常連だった慶應大学の学生のすすめもあって、三田へ移転。瞬く間に行列店となって、今にいたるという。
「都立大学駅前の店舗では『ラーメン次郎』の看板を掲げていたものの、三田では手違いで『ラーメン二郎』になってしまい、そのまま営業を続けたと言います。おぼん・こぼんの2人も、まさか上京当時に通っていた店が、ここまでの人気店に成長するとは思っていなかったかもしれませんね。ぜひともおぼん・こぼんの“二郎レポート”をテレビで見たいところですが、ラーメン二郎は今後も取材などについては対応できないとのテロップが番組最後に流れていたので難しいでしょうね」(グルメ誌ライター)
生涯取材を断り続けてきた“総帥”のVTRは永久保存版となりそうだ。