航空戦に出られないロシア、実はさらにその上の「宇宙戦」が重要だった!

 本来はロシア軍が早期に地上戦を押さえて、制空権を握って…とのシナリオだったが、未だ地上を押さえられずに空中戦も苦戦。大規模な航空戦略は展開されていない。一方、今回の戦争でクローズアップされているのが「情報戦」で、ウクライナの巧みさとこれを背後で支えるアメリカの情報の正確さが指摘されている。そしてその情報の多くが、「宇宙」から得られているという。

「そもそもアメリカがロシアのウクライナ侵攻の動きを察知したのが昨年11月。今年に入るとより高い可能性を示唆するようになり、2月17日にはバイデン大統領が『数日以内』と予告しました。これらは偵察衛星と商用衛星からもたらされる豊富な情報から割り出したものとされています」(週刊誌記者)

 19年に当時アメリカの大統領だったトランプ氏が、イランのロケット発射台の画像をツイッターにアップして大騒ぎになったことがあった。発射台の文字まで判読できる高解像度のものだったため、偵察衛星の「キーホール」が撮影したものと推察できたからだ。キーホールはアメリカ国家偵察局が運用する軍事偵察衛星のシリーズで、最新シリーズはKH13。ハッブル宇宙望遠鏡に形が似ていると言われており、分解能(地表識別限界)は軍事機密とされるが5センチ以下との予測もある。つまり、トランプ氏は大統領自らが国家機密を晒してしまったのだから大騒ぎになったわけだが、間違いなくアメリカの偵察衛星の技術力を示すものだった。

 さらにロシアはウクライナに向けて大量の車両を移動させていたわけだから、商用衛星でも簡単に今回の軍事侵攻は捕捉可能だった。事実、侵略前にはグーグルマップに渋滞を示す赤色の線が引かれていたという。こういったオープンソースを分析すれば、侵攻の程度も分かる。

 テスラCEOのイーロン・マスク氏は、ロシアの侵攻で通信インフラを破壊されたウクライナに、宇宙インターネット「スターリンク・サービス」を提供したが、これもマスク氏がスペースXで衛星を打ち上げているから可能となった。今や元ZOZOの前澤友作氏が宇宙に行くくらい民間でも宇宙開発でシノギを削る状況。なので衛星による情報が豊富に集まり、それを分析する能力も極めて高くなっている。これに通信傍受も加えて、アメリカはロシアの動きをかなり正確に把握しているのだという。

 といったように、今後の戦争は宇宙戦の重要性が増すわけだが、レベルの高さにおいてはロシアも負けていないという。

「ロシアの宇宙戦争能力はアメリカや中国よりも上と見られていました。ロシア航空宇宙軍は、空軍、ミサイル・防空部隊、宇宙部隊の3つから構成されています。つまり大気圏内と宇宙を作戦空間として受け持つということ。有人飛行能力、衛星測位システム、ジャミング(電波妨害)、スプーフィング(ニセGPS電波でのなりすまし)などの技術にも優れ、時によっては衛星を破壊する攻撃能力も有しているといわれています」(同)

 もし第3次世界大戦ともなれば、これらの能力での優劣を争う宇宙も戦争の舞台となるだろう。

(猫間滋)

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