石原慎太郎さんが東京都政で遺した「尖閣諸島寄付金」14億円がいまも宙ぶらりん

 2月1日に作家であり政治家であった石原慎太郎氏が亡くなった。89歳だった。生前は自由奔放な物言いで物議を醸したものだが、いまもなお賛否の声がある。

「テレビ出演も多く、政治的には左寄りで知られる山口二郎法政大学教授や社会民主党の副党首の大椿裕子さんが石原さんの発言の差別的傾向に言及して波紋を広げています」(全国紙記者)

 石原氏から副知事就任を依頼され、後に東京都政を引き継いだ作家の猪瀬直樹氏は、マスコミの取材に答えて「失言もあるけれど」としつつ、石原氏の魅力について語っている。

 政治的なスタンスは措くとして、猪瀬氏が言うように傑出した人であったことは間違いない。一橋大学在学中に『太陽の季節』でデビューするという早熟な作家で政治家で……などと石原氏が遺したものについて、今さら説明する必要もないだろう。輝かしいの一言だ。

 だが、石原氏が遺したものが数多ある中、いただけないものもいくつかある。「石原銀行」などと呼ばれ新銀行東京を設立したが、結局は上手くいかないまま地銀に吸収されたなんてこともあったが、東京都が募った「東京都尖閣諸島寄付金」もその1つだ。

「2000年代前半は中国の反日政策もあって、尖閣諸島周辺で操業や上陸など、日本と中国の間で領有を巡る争いが絶えませんでした。そして10年には、中国の漁船と海上保安庁の巡視艇との接触事故が起こり、中国国内での反日デモは頂点を迎えていました。これを快く思っていなかった石原さんは、12年に民間人の所有だった尖閣を東京都で購入するとして寄付金を集めたのです」(同)

 寄付は12年4月27日〜13年1月31日まで募られ、集まった金額は14億8520万円(約10万件)。ところが12年9月に、当時の民主党・野田佳彦政権が20億5000万円で購入してしまったものだから、寄付金は宙に浮いてしまった。尖閣はかつては沖縄県石垣島の村に編入されており、そもそもなぜそのような場所の島を東京都が購入するの?という疑問もあがっていた。使い道がなくなったお金に対し、寄付の募集が終了した13年2月段階で、160件の返還を求める電話が東京都に寄せられた。

 東京都には「尖閣諸島ホームページ」というものがあって、そこには約14億8000万円のうち8000万円は意見広告などのPR活動で使用したとあり、現在残っているのは14億円強とされている。現在は「尖閣諸島活用基金」という名称でプールされて国に活用を求めているが、国はこれを無視。だからホームページの「新着情報」には、毎年、国の予算編成の際に使ってもらえるよう提案したというニュースが掲載されているのだが、他に“新着”の情報がないこともあって、ひたすら毎年「国に提案しました」というお知らせがズラーっと並んでいるという、なんともやるせない状態なのだ。

 国もどうにかしてあげればいいのにとも思うのだが、この辺りは縦割りのお役所仕事の最たるものということだろう。

(猫間滋)

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