巨人の上原浩治が引退会見を行ったのは5月20日。シーズン途中での引退表明も異例だが、気になったのは上原の今後。「アマチュア選手の指導」という夢は以前から抱いていたそうだが、ユニフォームを脱いだ後、何をするのか明言していない。これには、プロ野球界の内情も強く影響しているようだ。
「コーチ、チーム帯同のスタッフ、フロント職員など、今シーズンの球団人事はすでに固まっています。他球団はもちろん、学生、アマチュア野球組織も同様です。巨人のなかでセカンドキャリアをスタートさせるのだとしても、来年以降になるのでは」(スポーツ紙記者)
しかし、時期的なことばかりが理由ではないようだ。若手選手からも尊敬される上原が「やりたい」と明言すれば、指導者の席を増やせばいいだけのこと。
「上原のように引退してしばらく休養を取っても、生活の心配がないOBは本当に少ない」(同前)
昨年の秋季教育リーグ期間中、日本野球機構(NPB)は参加選手に「セカンドキャリア」に関するアンケート調査を行った。この調査は毎年行われているが、昨年の調査結果は関係者をひどく驚かせている。〈引退後にやってみたい職業は?〉の問いで1位になったのは、一般企業の会社員だったのだ(15・1%)。プロ野球の監督・コーチは6位タイ(8・3%)まで下落。また、セカンドキャリアで「あまりやりたくない」&「やりたくない」職業でも、プロ野球の監督・コーチは52・4%もの高い数値を記録した。
「アマチュア選手の指導者を希望するプロ野球選手は、大学・社会人、高校野球を含む学生組織の監督という回答を合わせれば、今も30%以上の希望者がいます。野球に関わって生きていきたいとするものの、自身やチームの成績次第で雇用が切られる不安定なプロ野球球団が敬遠されているのです」(球界関係者)
上原は若手への影響力も強い選手だった。その上原がいったんプロ野球界と距離を置くような引退を選択したことで、NPBに執着しない傾向はさらに高まりそうだ。
そういえば、野球とは関係のないバラエティ番組で、上原は日米に複数の不動産を持っていることを明かしていた。不動産収入が、自由なライフスタイルを選択させたのだろう。巨人にはかつて不動産投資で失敗した有名投手もいたが、現役中からセカンドキャリアの準備を進めていく必要性は否めない。巨人は上原にどんな再アプローチをするのだろうか。
(スポーツライター・飯山満)