東京都から「工業高校」がなくなる!? DX社会に合わせ名称変更へ

 いかにもキャッチーな言葉遣いと新しいもの好きの小池百合子・東京都知事が進めそうな施策なのだが、2023年には東京都から「工業高校」が無くなる見込みだ。といっても、廃校で無くすというのではなく、工業高校という名称が無くなるという話だ。11月末に小池都知事は工業高校を改革する方針を打ち出したのだが、その際、名称の変更も行うという。

「東京都には現在20の都立の工業高校がありますが、今や小学校ではプログラミングの授業がある時代で、社会全体ではDX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉を聞かない日はないくらいですからね。工業高校はある意味その最前線に位置するわけで、だから工業高校も従来の在り方から脱皮してITスキル等に傾注するという方向性で話が進んでいます」(都庁担当記者)

 役所的な文句で言えば、目指すのは「技術の力で新たな価値の創出や課題解決をはぐくむ学校」にするのだとか。これだけだとどうにも分かりにくいが、いずれにせよ具体的なビジョンは年内にまとめるという。

 だから果たしてどんな名称になるのかは現在は不明。だが「工科高校」という名前が1つの候補として予想が成り立つという。というのも、愛知県では東京都に先駆けて全国初で工業高校の組織改編をし同時に名前も変えたのだが、その愛知県が採ったのが工科高校という名称だったからだ。

「愛知県には14の県立工業高校等がありますが、今年の4月から工科高校とその名称を改めています。『工科』とは『工業』と『科学』を掛け合わせたもので、改変の狙いは東京都とほぼ全く同じ。だから東京都もこの愛知県の先行事例を大いに真似る可能性が考えられます」(前出・記者)

 では愛知では、実際どう変わったかと言えば「理工科」を1校、「IT工学科」を4校、「環境科学科」を4校、「生活コース」という科を8校で新設し、既に1校ある「ロボット工学科」を7校へと大幅に拡大させた。また「情報技術科」と「情報システム科」を「情報デザイン科」に、「建築科」「土木科」をそれぞれ「建築デザイン科」「都市工学科」に名称変更した。

 日本では5年ごとに科学技術基本大綱というものが定められているが、16〜20年の大綱では未来社会のコンセプトとして「Society5.0」なる用語が登場し、次の5年間でもこのコンセプトの下での技術政策が踏襲されており、これに沿った変更だという。

 次世代の社会の在り方に適った改変はけっこうだが、単に名前が変わっただけ、に終わらせて欲しくないものだ。

(猫間滋)

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