天然成分のバス用品や洗顔料などが人気の英国初のコスメブランドのLUSH。世界仲で900店舗以上を展開して日本でも人気が高いが、そのLUSHは11月26日に無期限でSNSから撤退した。正確に言えば、フェイスブック、インスタグラム、ティクトック、ワッツアップからの撤退で、これを利用していない。同社によれば、「ユーザーの安全性が証明されるまでは復帰しない」という。なおフォロワー数はフェイスブックが100万でインスタは65万9000を超していた。
同社は19年にも「アルゴリズムとの戦いにうんざりした」という理由で撤退を検討したことがある。だが今回の理由は「若者への悪影響」だ。
「撤退するSNSを見れば分かる通り、フェイスブック、インスタグラム、ワッツアップはメタ(旧フェイスブック)が提供するSNSで、LUSHの今回の措置は対メタ対策という面が色濃く反映しています。となればもちろん思い起こされるのが、9月にフェイスブックの元社員が持ち出した内部資料の中にアルゴリズムを操作していた証拠があったこと。そして10月にアメリカの議会で証言した、若者に悪影響を及ぼすのを放置して自社利益を優先していたという事件で、LUSHとしてはこれを非常に重く受け止めているということです」(経済ジャーナリスト)
同様の証言は英国議会でも行われているので、LUSHの本国が英国であることからもそれは明らかだ。そもそもSNSにはある種の中毒性があって、特に若者への影響が心配されるという考えは世界共通のものとしてあり、日本でもスウェーデンの精神科医のアンデシュ・ハンセン氏による『スマホ脳』という書籍が売れていることでも共有されている。
その他の企業でもSNSから撤退の動きが見られたことがある。20年にはスターバックス、コカ・コーラ、ユニリーバといった企業が、一時的ながらSNSから広告を撤退させたことがあった。こちらはSNS空間内にヘイトスピーチが溢れているからというのがその理由だったが、いずれにせよSNSというのは便利な反面、非常に疲れるのも事実。
17年、18年ごろからはそのSNS疲れから有名人個人の撤退も相次いだ。真木よう子、満島ひかり、宮沢りえといった有名芸能人がインスタやツイッターのアカウントを削除。海外でも歌手のテイラー・スィフトや女優のブレイク・ライブリーなどが投稿を全削除したこともあった。
マルクスは人間が作ったもの(機械、貨幣、制度)がいったん出来上がって強力な力を持ち始めると、逆に人間がこれらのものに支配されるようになることを疎外と呼んだが、まさに人間はSNSに疎外された状況にある。そんな中こういった動きが続く辺り、そろそろSNS文化も曲がり角か。
(猫間滋)