五輪精神はどこへ?IOCバッハ会長、彭帥選手と電話会談でさらに深まった謎

 開幕まで3カ月を切った北京冬季五輪。ところが、開催国・中国で起こった女子テニス選手の告発に端を発するスキャンダルが、五輪開催をも揺るがす大騒動に発展している。

 中国を代表する女性テニスプレーヤー、彭帥が張高麗元副首相に性的関係を繰り返し強要されたとSNS(ウェイボー)で訴えたのは今月2日のこと。その後、彼女の行方が分からなくなったことから、その安否に注目が集まっていた。

「問題発覚後、世界の有名選手らが相次いで懸念の声をあげたこともあり、17日には中国国際テレビが、彭帥選手がWTA(女子テニス協会)のスティーブ・サイモン会長に宛てたとする『告発の内容は真実ではなく、今は自宅で休んでいる』といったメール文を紹介。20日には彼女が室内で猫と遊ぶ姿を報じたのですが、いずれも本人からではなく国営メディア発信だったことで、かえって疑惑を深めることになりました」(ネットライター)

 海外メディアも、性的関係を告発した女性が行方不明になる異常事態を重視。そして、その矛先は中国政府にだけでなく、ダンマリを決め込むIOCにも向けられた。AP通信は〈彭帥はどこに?なぜIOCは発言しないのか?〉と題して、「IOCは(中国の)ばかげた策略に満足しているようで、2月4日に北京で開かれる“10億ドル規模のパーティー”を脅かすようなことはしたくないようだ」と痛烈に皮肉った。

「米紙ニューヨーク・ポストも『IOCは権威主義者の足元をうろつき、アスリートの尊厳よりも収益を優先している。北京が自国の安全を保障しないのに、外国人アスリートの安全を保証することをどのように信頼しろというのか』と手厳しく批判しています。バイデン大統領は北京五輪に首脳や政府使節団を派遣しない『外交的ボイコット』を検討中で、今後追随する国も出てくるでしょう」(同)

 すると21日、IOCはバッハ会長が消息不明だった彭帥選手とテレビ電話で話したと発表。北京の自宅にいる彼女は「安全で健康だが、今は自身のプライバシーを尊重してほしい」と語ったと伝えられた。
 
 とはいえ、30分に及ぶ電話で具体的な会話の内容に言及していないことから、SNS上には《本物なのか?》《中国政府にいったい、いくらもらったのだろう?》《やっぱりぼったくり男爵は、人権よりも金か》といった声が続出している。

 世界が注目する「世紀の不貞」の着地点。オリンピックの精神は今回もないがしろにされてしまうのだろうか。

(灯倫太郎)

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