世界の福本豊 プロ野球“足攻爆談!”「阪神CS惨敗の致命的なスキとは」

 阪神がCSのファーストステージでシーズン3位の巨人に敗退した。両リーグ最多のシーズン77勝のチームとは思えない勝負弱さで1勝もできずに連敗。2万人以上のファンが入った本拠地・甲子園の地の利も生かせなかった。オリックスとの日本シリーズ関西決戦が早々に消えて、ちょっとガッカリやった。

 初戦のひとつのプレーで流れが決まってしまった。1点を追う5回無死一塁、打者・糸原でエンドランを仕掛けたが、ウエストされて一塁走者のマルテが盗塁失敗となった。4回まで菅野にパーフェクトに抑えられ、5回先頭のマルテが初安打。これからというところだっただけに、甲子園の虎党が静まりかえった。結局、5安打完封負け。試合後の矢野監督は、「(相手バッテリーが)外すってことは、何か根拠が‥‥。かなり高い確率でないと外せない」と、苦々しく振り返っていたが、阪神側にスキがあったということ。

 あの場面、一塁走者が外国人のマルテでは、作戦的に仕掛けづらい。セオリーなら送りバントやけど、初球はバントの構えも見せず1ボールとなった。勘の鋭い者ならここで「おやっ?」と思う。コントロールがいい菅野で、糸原はバットに当てるのがうまい打者。阪神側からすると、いちばんエンドランのサインを出しやすい状況。となると、巨人側は一塁ベンチと、三塁コーチャーのブロックサインに当然、注意を払う。

 サインそのものが解読されていた可能性もあるし、マルテ用に分かりやすくするサイン伝達の不自然な動きで「何かある」と察知されたかもしれない。菅野が一塁に牽制を入れなかったことを見ると、矢野監督の言うように「高い確率の根拠」があったと思う。捕手の球種サインを盗むのは禁止されているけど、作戦のサインを見破るのはルール違反でない。これもプロの技術のひとつ。このプレー以降、阪神は思い切った作戦を出せなくなった。

 動けないとなると、ピストル打線ではしんどい。初戦は菅野との相性も考えて、1番から島田、中野、近本と足の速いのを並べたけど、塁に出ることができないから仕掛けることもできない。大舞台ではシーズン中のデータや調子より、格や実績を大事にしたほうがよかった。結局、2戦目は大山、佐藤輝をスタメンに戻したが、後半戦不振のサンズは登録を見送ったまま。走者を置いた場面で代打で出したら、巨人は怖かったと思うんやけどな。

 2戦目の逆転負けは両リーグ最多のチーム失策を記録した守備の弱点がモロに出た。2点リードの3回は遊撃・中野のエラーをきっかけに3失点。1点ビハインドの8回にも三塁・大山の失策から失点につながった。ここは練習するしかない。僕も下手やったけど、地道に練習を重ねてうまくなっていった。春、秋のキャンプだけでなく、継続してコツコツやれば必ずうまくなる。今年まで4年連続の12球団最多失策数は、プロとして恥ずかしすぎる。

 矢野監督にとって就任4年目の来季は、選手流出の危機にも直面しており、もっと厳しくなるかもしれん。シーズン最後のほうでベンチを温めることが多かった梅野も内心、思うところがあるはず。FAで手を挙げれば球団は焦ることになる。報道ではマルテ、スアレスもメジャーを含めた他球団が興味を持っているという。17年ぶりの優勝には課題が山積みや。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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