いよいよ衆院選が公示されて全国各地で選挙戦がスタートした10月19日の午前10時過ぎ、北朝鮮でミサイルが発射されていた。潜水艦から発射される弾道ミサイル(SLBM)で、従来のものより迎撃が難しい新兵器だった。北朝鮮のミサイル発射は直近では9月28日以来で、今年に入って4回目だ。すると今度は熊本県で阿蘇山が噴火。共に「有事の危機管理」が選挙戦の投票行動に影響を与えそうで、とんだ選挙戦の出だしとなったが、一部からは「岸田自民党にとって有利に働くのでは」との指摘もある。
「そもそも外敵や災害が発生して不安が高まれば選挙では安定が求められます。となれば政権交代などもってのほか、と自民にとって有利に働くでしょう。特に今回の選挙は『分配』という内政の問題が最大の争点になっているので、これを巡っては金融所得課税や所得増計画の総裁選で掲げた公約をなし崩し的に後退させた岸田首相のブレの目くらましになります。外交問題は岸田さんの得意とするところですからね。さらには北朝鮮の脅威が高まれば、こちらも防衛上の争点となっている『敵地攻撃能力の確保』に世論の後押しが加わるでしょう。そしてこれは20年に安倍首相が唱え始めたものですから、自民の党内バランス的にも安倍路線の踏襲ということで落ち着きやすい」(全国紙記者)
というように、政策や実績といった部分で自民支持に傾きやすいからという理由もあれば、北朝鮮のミサイル発射と日本の選挙の間にはなにやら都市伝説的なかかわりがあるようで。
「そもそも北朝鮮がミサイルを発射したら自民有利、とのジンクスがあるんです。12年に自民党が与党に返り咲いた選挙の直前でも北朝鮮はミサイルを発射、17年には乱発もあってその脅威が高まっていたことから、安倍首相がこれ幸いと『国難突破解散』とのネーミングに利用したほどでした」(前出・記者)
それで実際に前回の17年の衆院選を振り返ってみれば、10月に行われた選挙の前の8月に北朝鮮は中距離弾道ミサイルを発射。この時は日本の上空を通過して太平洋に落下したので、当時、国内では避難警報まで発令された。火山の噴火では、10月22日投開票の直前の11日に宮崎・熊本県境の霧島連山・新燃岳が噴火して地元の選挙戦も行動を抑制されたほどだったのだが、こちらに至ってはタイミングがピッタシ同じときている。
今回の北朝鮮のミサイル発射と噴火に関しては、さっそく野党が「危機管理不足」と攻撃。選挙戦に大きく影響するので官邸サイドはピリピリしているというが、対応いかんでは大きな波を引き寄せることも可能だ。31日まで残りわずかだがまだ時間はあるから何が起こるか分からない。
(猫間滋)