【謎其の十】なぜ主役交代は起こったか?
新選組はこれまで数多くの映画、ドラマで描かれてきた。戦前の作品を除いてほとんどの作品はDVDやネット配信サービスで見ることができる。
「戦前から戦後の50年代頃までは、主人公は片岡千恵蔵などの大物俳優が近藤勇を演じていますが、次第に主人公は土方歳三やそれ以外の人物に変わっていき、近藤は脇役という形が多くなっている」
と河合氏は指摘する。
一方、ビビる大木は、
「土方を見ていると、いかにナンバー2の存在が重要なのかということがよくわかる気がします。ドラマの主人公もそういう意味で、ナンバー2の土方のほうに移ってきたんでしょうね」
土方歳三を主人公にした65年の時代劇「新選組血風録」が大ヒットし、主演した栗塚旭も大ブレイク。その後、幾度も土方を演じ、元祖土方歳三役者と呼ばれている。
堀口はアラサー女子ながら、この栗塚主演作品がイチオシのお気に入り。
「栗塚さんの土方歳三、島田順司さんの沖田総司というのが、最高にしっくりきて、大好きです。特に土方が転戦していく中で『風去りぬ』という第24回では、沖田総司は病気で江戸に残って療養するしかないという状況の中、もう二人共二度と会うことはないとわかっているのに、『またな』『さよなら』と言って別れていく。このシーンがとても切なくていいのです」
さらにこう続けた。
「NHK大河ドラマの『新選組!』は、何といっても実際の新選組と俳優さん達の年齢が近かったことで、それまでの新選組ドラマにはない青年達の情熱みたいなものが感じられたし、映画『御法度』は、新選組の隊服がワダ・エミさんのデザインで黒い衣裳になっていて、例のダンダラ羽織が出てこない作品。従来の新選組映画のイメージを裏切ってて面白かった」
ことほどさように、新選組の謎は、数多存在し、その闇もまた深い。
秋の夜長、生と死のあわいに生きた若き隊士達に自らを重ね、来し方行く末に思いを馳せるのも悪くはない。
河合敦(かわい・あつし)65年、東京都生まれ。多摩大学客員教授。歴史家として数多くの著作を刊行。テレビ出演も多数。近著:「絵画と写真で掘り起こす『オトナの日本史講座』」(祥伝社)。
ビビる大木(びびる・おおき)74年、埼玉県生まれ。お笑い芸人。ジョン万次郎資料館名誉館長、春日部親善大使など、さまざまな観光・親善大使を務める。著書:「ビビる大木の幕末ひとり旅」(敬文舎)ほか。
堀口茉純(ほりぐち・ますみ)東京都生まれ。明治大学文学部卒業後、女優デビュー。「江戸に詳しすぎるタレント=お江戸ル〝ほーりー〟」として注目される。著書:「TOKUGAWA15〜徳川将軍15人の歴史がDEEPにわかる本」(草思社)ほか。
*「週刊アサヒ芸能」10月21日号より。(4)につづく