パ・リーグの優勝争いが面白い。オリックス、ロッテ、楽天、ソフトバンクが5ゲーム差以内の四つ巴の戦いが続く。最終的にどうかと聞かれると、解説者泣かせの展開やな。どう転んでもおかしくない。ソフトバンクがトップにいれば分かりやすかったけど、引っ張っているのが、オリックスとロッテという近年、優勝経験のない2チーム。いずれにせよ、最後までもつれるのは間違いない。
オリックスはイチローが在籍していた1996年以来の大チャンスやから、なんとか頑張ってほしい。後半戦スタートの段階では「本命」にしてもよかったけど、ポイントゲッターの吉田正尚の離脱が痛すぎる。9月5日に左太腿裏の肉離れで登録を抹消された。ほんまにやっかいな箇所。治ったと思って、焦って復帰したらまたプチッとやってしまうこともある。シーズン中に復帰できたらいいけど、最後まで不在になるのも覚悟しないといけない。打率3割3分8厘の首位打者の代わりは誰もおらん。今シーズン大化けした〝ラオウ〟こと、杉本がどこまでカバーできるかやな。
強みは、山本由伸と宮城の左右の両エースがいること。この2枚看板が投げる試合は絶対に落としたらアカン。宮城は高卒2年目やけど、抜群の安定感がある。勝ち星、防御率を由伸と争っているけど、何よりいいのが「勝ち運」を持っていること。打たれてしまった試合でも打線が援護してくれることが多い。8月を終えた段階で11勝1敗、一人で2ケタの貯金を稼いだ。6連戦で考えると、山本と宮城で2勝すれば、あとの4試合を1勝3敗でも勝率5割。2人がアクシデントさえなくシーズン最後まで頑張れば、悪くても3位以内は確保できるはず。
9月5日に単独首位に立ったロッテは五輪代表に一人も選ばれなかったように、飛び抜けた選手はいない。これという強みはないけどしぶといし、終わってみれば勝っているという不思議なチーム。荻野や和田、藤原と走れる選手が多いので、接戦でこそ力を発揮する。それにしても、9月の単独首位は70年以来というから驚く。僕が入団2年目の年で「足長おじさん」と呼ばれたアルトマンが打ちまくっていたのを思い出す。プレーオフで勝っての優勝はあるけど、勝率1位が50年もないのにファンはよく辛抱してくれた。
両チームとも目の前に優勝が見えているんやから、士気も上がる。でも心配なのは優勝争いの経験の少なさ。大一番になると、プレッシャーに潰されるというより、力みにつながる恐れがある。リラックスして普段どおりのプレーをするのは難しい。
そう考えると、4年連続日本一のソフトバンクはまだまだ逆転の目がある。先発陣に田中将ら経験豊富な選手が多い楽天もあなどれん。ソフトなんか順調ならぶっちぎってもおかしくない戦力があったのに、故障者も多く、投打に誤算だらけのシーズンやった。特に守護神の森と、セットアッパーのモイネロの2人がいなくなってからは、信じられないような逆転負けが増えた。でも、森が9月7日に復帰し、モイネロも復帰間近と聞く。この2人が帰ってくればラストスパートの態勢は整う。
泣いても笑っても、残り30試合ほど。コロナ禍で僕も巣ごもりの日々が続くけど、シーズン最後まで熱パを楽しみたい。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。