それでも、藤浪の名前は出てこないようだ。
9月14日の東京ヤクルトとの試合前だった。同日の試合に出場できる選手登録の締め切り時間である午後3時、阪神が西勇輝投手の一軍登録を抹消した。前日に先発登板したピッチャーを翌日にいったん抹消し、別の投手と入れ換えるのはよくあること。しかし、西が登板したのは、9月10日。ヤクルト戦の東京遠征には参加していなかったが、「甲子園球場に残って、フツーに練習していた」(在阪記者)という。それだけに、神宮球場三塁側の阪神ベンチに緊迫感が走った。
「寝違えて、体調がイマイチだと言うんです。終盤戦の大事な時期なので、一度登録を抹消し、最短で再登録できる24日からの巨人戦に備えさせようとしたみたいです」(スポーツ紙記者)
大事には至らなかったようだが、気になるのは、西が先発登板する予定だった17日の代役投手が誰になるのか、だ。矢野燿大監督もまだ結論を出していないようだったが、
「17日から中日、巨人との3連戦が始まります。髙橋遥人、秋山拓巳、ガンケルを1日ずつ前倒しするようです」(前出・在阪記者)
との予想が多く聞かれた。
16日が移動日となるので先発投手陣の負担が大きくなることはなさそうが、同時に聞こえてきたのが、「代理先発は立てないのか?」の声。その代理先発とは、藤浪晋太郎投手のことだ。
「目下の藤浪は二軍調整中です。10日に一軍登録を抹消されたので、最短で戻ってこれるのは20日。前半戦を牽引した青柳の調子が落ちており、髙橋たちを前倒しした分、どこかで休ませなければいけないので、1回くらい、先発で使ってもいいんですが」(同前)
しかし、登録が抹消される前の日の9日、藤浪は中継ぎ登板しており、1イニングで3四球を与え、2失点と炎上してしまった。
「10日に抹消される前なんですが、藤浪が一軍登録されたのは2日。同日先発の予定でしたが、雨天中止となってしまいました。出場登録の締め切り時間である午後3時時点では、試合を行う方向だったので、藤浪を登録せざるを得ませんでした。試合が中止と発表された後、藤浪の起用法を聞かれ、矢野監督は『これから考える』みたいな言い方でした」(同前)
西の抹消による代理先発として名前が挙がらなかったこと、9月2日の一軍登録後の“塩対応ぶり”から察すると、信頼されていないようだ。このまま優勝戦線を勝ち抜くことができたとしても、矢野監督は藤浪再生という大事な課題を来季以降に持ち越すことになりそうだ。
藤浪、佐藤輝明のいない首位争いは寂しい限りだ。
(スポーツライター・飯山満)