侍ジャパンが東京五輪・野球競技で悲願の金メダルを獲得した。“日本野球”の金メダルはオープン競技だった1984年ロサンゼルス大会以来、また、オールプロでチーム編成された04年以降では初の頂点となった。稲葉篤紀代表監督の「五輪の借りは五輪でしか返せない」という言葉の重みも改めて分かった。
「やはり、五輪終了をもって代表監督は退任となるようです。次の大きな国際大会は2023年のWBC。WBCは新監督で臨むことになります」(ベテラン記者)
急浮上してきたのが、元巨人監督の高橋由伸氏。「指揮官の未経験者を据えるリスク」はかねてから指摘されていた。しかし、代表チームの“監督人事権”は全日本野球協会の強化委員会にある。未経験者のリスクに関する声は届いているが、高橋氏の名前が急浮上してきた理由も、強化委員会が影響していた。
「稲葉監督の前任が小久保裕紀・現ソフトバンクコーチでした。両者に共通しているのは、代表チームのリーダー的存在だったということ。稲葉監督は小久保政権下で打撃コーチも務めています」(球界関係者)
代表監督の選考では、「内部昇格」という点も意識しているようだ。
高橋氏は侍ジャパンのメンバーとして、アテネ五輪の予選・本大会で活躍しているものの、それ以降は故障などもあって、代表チームからは遠ざかっていた。しかし、
「稲葉監督下で内野守備走塁コーチを務めた井端弘和氏です。井端コーチは巨人で現役生活を終えましたが、15年オフ、高橋氏の現役引退と監督就任を聞き、『彼よりも長く(現役を)やることはないと思っていた』と、引退を決意しました。高橋監督の下でコーチも務めています」(同前)
稲葉監督が声を掛けて侍ジャパンのコーチになった金子誠、建山義紀両コーチは「ともに退く」と予想されている。次の新体制に強化委員会がこだわる内部昇格の要素を井端コーチの残留で示し、その世代で監督経験を持つ高橋氏を招聘する”折衷案“になりそうだ。
「高橋氏はまだ46歳と若く、新チームでは佐々木朗希、奥川恭伸、佐藤輝明、宮城大弥など代表未経験の若手も招集されるでしょう」(ベテラン記者)
常設された侍ジャパンの悩みは国際試合の観客数、テレビ視聴率がイマイチなこと。現役時代から人気選手だった高橋氏の新態勢に期待する声が早くも聞かれた。国際試合を企画運営するNPBエンタープライズには読売関係者の出入りも多い。優勝経験のない高橋氏にリベンジのチャンスも与えたかったのではないだろうか。
(スポーツライター・飯山満)