堀米雄斗ら金メダルラッシュで人気急上昇!「公園でのスケボー禁止」の攻防は?

 まさに“メダル効果”だろう。東京五輪で初めて競技採用されたスケートボードは、男子ストリートで堀米雄斗が金メダルの快挙を遂げると、続く女子ストリートでも西矢椛が金、中山楓奈が銅メダルを獲得。4日におこなわた女子パークでは四十住さくらと開心那が金・銀を奪取し、日本選手のレベルの高さを見せつけた。するとさっそくスケボーのショップやスケボーが行われるパークには堀米らに憧れる子供たちが押しかけて、体験会や教室が大人気なのだという。

「日本のスケートボード人口は協会のホームページでは40万人と紹介されていますが、一説には100万人いるとも言われています。もともと五輪種目に採用されてから人気が高まっていたところに、コロナ禍の中でも1人で屋外で楽しめるスポーツとしてこのところさらに人気が高まっていました」(スポーツライター)

 そういった下地があったところにすい星のごとくスターが現れたとあって、一気に熱が高まっているのだという。だがそうなると必ず起こると予想されるのが、既に水面下で展開されていた公園でのスケボー禁止を巡る、ボーダーと行政の“攻防戦”の一層の激化だ。

 現在全国300カ所と言われるスケボーが出来る遊び場・施設はこの4年間で倍増したという数字もあるようだが、もともとそう多いわけではなく、逆にプレーヤーが増加した分、身近な公園でボードに乗る人が増え、これを禁止する行政との争いは絶えないというのが現状なのだ。

 例えば有名なのが大阪・中之島公園での衝突。大阪市役所や日銀大阪支店などがある行政の中心地にあり文化財も多い公園だが、スケートボーダーの不正利用が後を絶たないことで知られる。もともとストリートカルチャーで公園などで行われていたスケボーなので、堀米が決めた「トリック」という技はそもそも、「セクション」と呼ばれる公園にあるような手すりや階段など利用して行われる。だから、階段やスロープが破損し、「音がうるさい」「スケボーとぶつかりそうになった」といった苦情は昨年だけで400件以上寄せられていた。

「そこで大阪市としては公園条例で禁じている『他人に危害を及ぼすおそれのある行為』にスケボーが当たるとして公園内での使用を禁止。昨年12月にはタイルにブロックを設置してスケボーが出来ないようにしたり、『スケートボード禁止』と大きく書かれた看板を設置したりしたのですが、公園でスケボーの技を披露する動画がYouTubeに上げられて有名なプレースポットになってしまっているので、わざわざ遠方からスケボーをしに来るファンがいるくらいで効果は上がっていません。道路交通法は公園内は適用範囲外なので、大きな事故でも起きない限りはボーダーの排除は不可能。ボーダーと行政のイタチごっこになっているというのが実情です」(前出・ライター)

 ただ、オリンピック種目にまでなったにも関わらずスケートボード文化が極めて薄いという現実はボーダーにとってはかわいそうだ。例えば東京だと駒沢オリンピック公園(世田谷区)、たちかわ中央公園(立川市)、武蔵野公園(府中市)など、公共の公園でありながらセクションが設置されていてスケボーを行える施設が15カ所以上ある。ところが同じ大都市でも大阪市に至ってはゼロなのだ。

 先のスポーツライターによれば、スケートボードがオリンピック種目に採用されたのも、近年は開催地候補に名乗りを上げる都市が少なくなってオリンピックの地位が下る中、その対抗策として「若者の取り込み」を図りたいというIOCの狙いがあるとか。そんな良いとこどりの政治的意図があるのならば、早急の環境整備を急ぐのも彼らの責務のはずだ。

(猫間滋)

スポーツ