若者の間でゴルフが大人気だ。2020年の統計を見ると、コロナ禍でゴルフプレーの支出の全体平均は前年から減少しているものの、20〜40代の若い世代に関しては増加。「ゴルフはオヤジのやるもの」といった先入観が覆り、業界からは「バブル以来」の人気復活との声も聞こえる。
「松山英樹のマスターズ優勝も大きなプラス要因でしょう。遡れば2007年の石川遼の史上最年少ツアー優勝、19年には渋野日向子の全英オープン優勝があり、若者がゴルフに抱くイメージが向上する下地はありました。07年と19年のゴルフ市場規模は前年と比べてそれぞれ230億円、300億円も拡大しているのです」(経済ジャーナリスト)
いわゆる「3密」を回避でき、お家時間を強いられる中でなまった体を動かせるという利点。また菅首相肝いりで国がワーケーションを推進している事情もある。人生100年時代に、長く楽しめるスポーツを若いうちにといったマインドも背景にはあるだろう。そんな追い風にあやかろうと、ゴルフ業界はいま様々な工夫を凝らして顧客獲得に努めている。
ワーケーション推進とリモートワークの日常化で増えているのが、クラブハウスや付帯する宿泊施設を改造、リモートオフィス化して、ゴルフ場を「仕事ができる場所」にしようという取り組みだ。
例えば千葉県の体験型リゾート施設の「Sports&Do Resortリソルの森」では、1カ月ゴルフし放題のワーケーションプランを販売している。宿泊はグランピングが30泊64万5000円〜、ログコテージ泊だと同31万5000円〜(ともに税別)があり、購入者は近くの真名カントリークラブで毎日、ハーフプレーが楽しめる。朝と午後の2つのスタート時間が選べるので、例えば早朝からプレーを楽しんで午後は部屋に戻って仕事に没頭なんてことも、またその逆も可能。しかも天然温泉付きなので、1日の疲れもしっかり癒せる。
ほかにも太平洋クラブが運営する「軽井沢リゾート」のワーケーション&リゾートテレワークプランは、毎日3ホールプレーできて、2018年にリノベされたリゾート施設の客室はフリーWifi完備。ポケットWifiの無料貸し出しもあり、テラス席でWEBミーティングすることも可能だとか。
若者プレーヤーの発掘に努めているのだリクルートだ。同社が運営する「ゴルマジ!」では、全国120のゴルフ場と練習場で、21歳と22歳の若者はタダで利用できるという、なんとも太っ腹な取り組みを行っている。
「なぜリクルートがという疑問が湧くと思いますが、バブル以後に若者のゴルフ離れに危機感を募らせていたゴルフ業界が同社と組んで、若者のゴルフ需要を活性化させようとこのプロジェクトを進めてきたのです。この試みは既に08年から行われていて、実は毎年恒例化しています」(前出・ジャーナリスト)
ゴルフブーム復活の裏には、3密回避というコロナ下の一過性のブームには留まらない、関係者の努力とアイデアがあるようだ。
(猫間滋)