さらに脳には「はやりものや、気になる人と同じものが欲しい」「周りの人と合わせたい」など、モノマネをしたがる癖がある。こんな習性に覚えのある人も少なくないだろう。
「特に日本人は文化的な背景もあり『同じことをしていれば間違いない』と考えがち。例えば、就活時に大半の学生が着るリクルートスーツなどがいい例。ただ、リクルートスーツは就活という明確な目的があるため、後悔はしにくい。一方、ふだん着は目的がはっきりしないことが多いので、店員に悪魔のささやきをされると、その場の雰囲気で買ってしまい、家に帰ってから、こんなはずじゃなかったと後悔する。これが無駄遣いの典型的なパターンなんです」
では、どうすれば貧乏神のハイジャックを阻止し「リッチ脳」に変換することができるのか。そのポイントとなるのが、自分の言動を客観的な第三者視点で見ている「メタ認知」と呼ばれる知識を有効に使うことだという。
「例えば、お店で衝動買いしそうになった時には、携帯電話で写真に撮り、いったんレジから遠ざかる。またネットショップでも購入ボタンを押す前にスクリーンショットで撮影し、しばらくペンディングすることで、間を置くことが大切です。というのも、人間の脳には『理性』より『感情』の支配力が強いというメカニズムがある。だから怒りや喜び、悲しみなどは瞬間的に現れます。それらの感情は真ん中の古い脳で生まれ、前頭葉が本能的な部分を抑え込んでいる。その前頭葉の中で『意志』をつかさどるのが前頭前野。ですから、その働きで貧乏神から操縦桿を奪い返す前頭前野が動くまで『間』を開けることが必要になるんです」
また、手に取った商品はすぐにレジに持って行かず、3つの欠点を思い浮かべて「けなす」、あるいはピンクの象(2本足で立つどぎつい色の象)を思い浮かべるという方法もある。
「人の脳は何かに対して、けなしている時はドーパミンが出なくなる。そのため、冷静な思考に戻れるはずです。さらに脳は一度に1つのことにしか集中できないため、買い物の最中どぎつい映像を思い浮かべれば、いったん思考が停止してしまう。そのうえで本当にそれが必要なのか、店員が勧めるから悪いと思っているのではないのかなど、あれこれ考えれば、理性的になれるはずです」