海外ニュースが伝えたところによると、フランス・ベルサイユの裁判所は6月15日、イケアのフランス法人が従業員の個人情報を不正に利用したとして、法人に約1億3300円万円の罰金、元CEOに禁固2年、罰金約660万円の執行猶予付き判決を下したという。
元CEOは公判の中で「不正行為は一切行っていない」と主張していたというが、この事件、「個人情報の不正利用」と聞けばまだ穏健なイメージが浮かぶが、もう少し中身を見てみればかなりのドロドロで、一言で言えば従業員をスパイで見張っていたという。
「事の発端は12年のこと。フランスのとある地方店舗に勤める従業員が、社員や採用予定者、顧客に関する数十ものファイルがパソコン内にあるのを見つけたことにあります。そこには、それらの人物の犯罪歴や家族関係、経済・健康問題なども細かく記録されていたそうです」(経済ジャーナリスト)
この店舗には10年に組合によるストライキがあって以来、会社から目を付けられていた社員がいて、会社としてはその動向を伺っていた。興信所を使って社員の行動確認をするといったことは、あまり表沙汰にはならないものの、実際のところ企業社会の裏面として、ない話ではない。
ところが、偽の同僚を組合に潜り込ませたり、問題社員の奥さんを味方として寝返らせようという計画もあったというから、まるでスパイ映画さながらだ。その社員は後に、会社側の複数人の人間が訴えたことで「モラハラ」があったとして会社を追われたという。
「会社が収集していた情報には、犯罪歴や口座情報といった、通常なら個人や民間では入手できない情報も含まれていました。そこで、買収を通じて警察の秘密資料を得ていたとして、検察当局が12年4月から捜査を開始。13年11月には元CEOを含む役員3人が『個人情報収集の共謀』『職業上の秘密保持義務違反の共謀』の容疑で訴追されていました」(前出・ジャーナリスト)
そして下された有罪判決。裁判所が認定した事実としては、フランス法人と元幹部など15人が、09〜12年にかけて従業員や採用予定者に対してスパイ行為をするシステムを構築していたという。フランスでスパイと言えば、歴史の教科書に出てくる「ドレフュス事件」という有名事件を思い浮かべる人もいるかもしれない。だがこちらは冤罪だったが、今回は有罪だ。
知られるようにイケアはもともとはスウェーデン発祥の企業で、日本を含め全世界で店舗展開を行っている。フランスにおいては、19年5月にフランス国内で34店舗目となる「パリ1号店」を出店、郊外だけでなく都市型店舗の展開を行っている。この辺りの事情は、昨年6月に原宿1号店を出した日本国内の事情と同じだ。なお、イケアのフランス法人は、過去の事実について非難し、再発防止のための措置を講じたという声明を出している。
(猫間滋)