剛速球は必要ない?中日・柳が証明したパ・リーグ対策

 6月3日終了時点でセ・リーグの25勝19敗8分け。「強いパ・リーグ」のイメージもすっかり定着していただけに、遅ればせながら今年の交流戦への関心が高まりつつある。

「ペナントレース前半で不振だったDeNA、中日が交流戦で首位争いをしています。両チームとも『交流戦対策』を練っていたとの情報はありませんでしたが」(ベテラン記者)

 DeNAの強力打線、中日投手陣の奮闘。とくに、交流戦2戦2勝、防御率ゼロの中日・柳裕也投手に“パ・リーグ攻略のヒント”がありそうだ。

「6月1日の千葉ロッテ戦では被安打1の完封勝利。柳本人は『直球と変化球のコンビネーション』と話していましたが」(前出・同)

 たしかに、中日サイドからは「チェンジアップが良かった」「カットボールのキレが」と変化球に対する称賛の声も出ていた。しかし、パ・リーグの強打者たちを幻惑させた勝因は直球のほうにあるようだ。

「昨季と比較すると、柳が直球を放る割合が激減しています。データによれば、昨年は全体の約45%が直球でしたが、今年は30%台、変化球全ての割合が増えています」(球界関係者)

 どちらかといえば、速いボールを投げるほうではない。完封劇を見せた1日も球速は130キロ台だったが、緩急と落差のある変化球を投げ分け、直球はほとんど使っていない。対戦バッターは直球勝負を捨てた新スタイルにタイミングを取り損ね、また、球種の多さに狙い球を絞りきれなかったようだ。

「ローテーションの関係で遠征から外れると、新人の高橋宏斗をキャッチボールの相手に指名し、色々と教えているそうです。柳のほうから色々と高橋に話しかけています」(前出・同)

 ボールの握り方など、アドバイスも送っているそうだ。

 柳は学生時代から主将を務めるなどしてきた。後輩への気配りもできる良き先輩でもあるが、「教える」ことで自分を見つめ直す機会になったのかもしれない。

「高橋の直球はとても高卒の新人とは思えません。粗削りなところもあり、まだ一軍レベルはありませんが、そういうタイプとキャッチボールをしていたら、考えますよね(笑)」(前出・同)

 これまでは、セ・リーグの投手がパ・リーグの強打者に力負けしていると言われてきた。柳の投球スタイルを、セ・リーグ各球団が研究してくるのではないだろうか。

(スポーツライター・飯山満)

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