日本医師会の中川俊男会長が、先月20日という「まん延防止等重点措置」が適用されている時期に、自身が後援会長を務める自民党の自見英子・参院議員の政治パーティーに出席していた件。25日からは4都府県で3回目の緊急事態宣言が発令され、ちょうど感染者拡大の緊張が高まっていた時期のことだけに、本人は「慎重に判断すべきだった」とひたすら陳謝。しかし、例えば橋下徹氏などは、
「彼がこのまま会長を続けていたら国民みんな言うこと聞かないです。僕は医師会会長、能力に関係なくメッセージを出す立場として辞めるべきだと思います」
とリモート出演したテレビで語るなど手厳しい。それはそうだ。パーティーに出席した翌日の21日には「3度目の緊急事態宣言は不可避の状況」と、政府に発令を要望して危機感を煽っている辺りに至っては、「自分の行動だけは別」とタカをくくっているのが明らかだからだ。
だが、こういった事態に至るのもある意味必然だったという声もある。医師会を取材する記者はこう語る。
「年末年始を控えて感染第3波の高まりは必至と見られていた昨年12月に中川会長は医師会職員向けの『行動倫理指針』なるものを定めて、『役職員は企業等が主催する会食に参加してはならない』と厳しい行動制限を周囲に課しましたが、『会長の承認を得れば参加可能』という但し書きが付いたものでした。だから、中川会長がOKと言えばOKという骨抜きルールだったんです」
政府のコロナ対応が後手後手になる中、厳しい意見を政治に物申す医療関係者、ひいてはそのトップである中川氏の世間での株は上がる。その役割を演じ続けたかったのだろうか、さらに4月にまたも職員向け内規を改めたのだが、そこにもまた但し書きが付いていた。
「今度は『外部関係者との会食は禁止』『役員も含めた役職員同士の会食も禁止』とさらに厳しいお達しでしたが、これも『会長の許可を得られたら可能』というものでした」（同前）
トップである自分がOKと判断すれば許されるという俺様ルール。だからパーティーへの参加も自分がOKと判断したから許されたということなのか。もっとも、4月に内規を改めたのは、厚労省の職員が銀座で大っぴらに会食を行ってバレた一件を見て参考にしたのだろう。
ちなみにパーティーのタイトルは「次世代の医療政策を考える会」。次世代は見ても今の状況は見ないらしい。
（猫間滋）
