「松屋」が過去最大の赤字に陥った原因?テイクアウトメニューの難題とは

 5月10日、牛丼チェーン「松屋」を運営する松屋フーズホールディングス(HD)は2021年3月期連結決算(20年4月1日~21年3月31日)を発表し、純損益が23億7600万円と過去最大の赤字に転落していたことが明らかとなった。これにネット上では《よく利用するお店なので頑張ってほしい》《松屋はよくやってる。どうかこの時代を耐え抜いて》など応援の声が多く寄せられているが、松屋が現状でコロナに勝てなかった理由とはどこにあるのだろうか?

「同社の発表によれば、コロナによる外出自粛や時短営業によって売上高は前年同期比11.4%減の944億1000万円、営業利益も16億8300万円の赤字となりました。松屋フーズHDが最終赤字となるのは2007年以来となる実に14年ぶりで、21年3月期の業績予想についてはコロナの収束時期によって業績に与える影響が大きく『現時点で見通すことが困難である』ことから未定としています」(経済ジャーナリスト)

 同じく牛丼チェーン「吉野家」を運営する吉野家ホールディングスも75億円の最終赤字に転落しているものの、「すき家」は20年3月期の既存店売上高が前年比を上回るなど好調で運営するゼンショーホールディングスも大幅な黒字となる見込みであり、決して牛丼チェーン全体がコロナに弱かったというわけではない。

「『松屋』と『吉野家』が繁華街に多く出店しているの対して、『すき家』は郊外に多く出店しているといった違いもありますが、『松屋』がテイクアウトやデリバリーでも売上を伸ばせなかった原因はメニューが多すぎる点との指摘もあります。同チェーンでは、牛めしの他にカレー、うな丼、定食などがある上に2週に1回ほどのペースで新メニューを次々と投入。テイクアウトやデリバリーで注文する際には、”何が食べたいからどこのお店で注文する”となりますが、『松屋』はメニューの多さからコレといった商品がむしろ見つかりにくい状況を招いています。しかも今期は、期間限定で投入される新メニューでヒットしたのは前期に話題となった『シュクメルリ』の復刻ぐらい。幅広い客層をひきつけようという戦略が、アダになってしまっている面もあるようです」(前出・経済ジャーナリスト)

「松屋」の苦戦はしばらく続きそうだ。

(小林洋三)

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