先日創設を発表したサッカー欧州スーパーリーグが21日、参加予定だったプレミアリーグの全6クラブが撤退したことを受けて、計画を見直すことを発表した。
世界的なビッグビジネスでもあるヨーロッパのサッカーシーンで、一握りの金持ちビッグクラブを中心に新たな最高峰リーグを結成しようという動き出したことで関係各所から批判が巻き起こった。
「スペインサッカーの強豪のレアル・マドリードのフレンティーノ・ペレス会長が公式HPでこの『スーパーリーグ』の構想を18日に公表したところ、選手や監督やサッカー関係者、そしてサポーターからも『一部の者の私腹を肥やすもの』『スポーツ精神に反する』といった批判が数多く巻き起こりました」(スポーツライター)
というのも、現在は、各国のリーグ戦の成績上位チームが集ってチャンピオンズリーグを戦い、最後まで勝ち残ったチームがヨーロッパNo1の栄冠を手にするという、ピラミッド構造の民主的で整合性が取れた形になっている。ところが一方のスーパーリーグでは、スペインのレアル・マドリード、バルセロナ、イングランドのマンチェスター・シティ、アーセナル、イタリアのACミラン、ユベントスといった、チャンピオンズリーグの上位常連の金満クラブ12チームが常任チームとなり、さらに参加を呼び掛けているビッグクラブチームと、毎年の各国シーズン成績上位の5チームを加えた計20チームでリーグ戦を争うという、独占的で不整合な形となるからだ。
しかもこれは、チャンピオンズリーグを開催するヨーロッパサッカー連盟のUEFAを敵に回すことになり、また国際サッカー連盟のFIFAは、スーパーリーグに出場する選手はワールドカップに出場できないことを示唆しており、世界のサッカー界を分断するものでもある。多くの批判が起こらないわけがない。
とりわけサッカーは世界で40億人のファンを擁するワールドスポーツだ。それだけに構想に対してはイギリスのジョンソン首相やフランスのマクロン大統領も反対の意向を示し、さらには英国王室からも懸念の声が寄せられた。
ただ金満クラブが仕掛けた新たなビジネスだけに、周囲では多くの札束が舞っているようで。
「まずスーパーリーグでは常任の15チームは前払いの約4550億円をシェアすることになっていて、準備段階から大きな金が動きます。そして現在、チャンピオンズリーグに参加するチームに支払われる金額は約2600億円ですが、スーパーリーグだと初年度には1兆3000億円が支払われることになっていてケタが違ってきます。これを受けて、構想が公表された翌19日には、スーパーリーグ参加予定の株価が急騰。ユベントスは前日比17.9%も高騰し、マンチェスター・ユナイテッドも一時は10%高を超える場面がありました」(前出・ライター)
さらに、UEFAはもともと24年からチャンピオンズリーグの開催方式を変えて改革する予定だったが、構想の公表を受けてUEFAはこの改革に大金を投じるために英国の投資会社との間で約7800億円もの資金提供を受ける協議をしているとも伝えられた。
こういったあまりに大きなハレーションを前に臆したのか、21日現在、スーパーリーグに参加予定だったイングランド6チームのほかに数チームが撤退を表明している。近年のチャンピオンズリーグでのイングランド勢は上位常連で決して欠かせない存在だ。しかも昨年のチャンピオンズリーグチャンピオンのバイエルン・ミュンヘンとドイツリーグ上位常連のドルトムントのドイツ勢とフランスの強豪パリ・サンジェルマンははなから参加拒否と、笛吹けど踊らず状態。となればこの謀反、取らぬ狸の皮算用に終わりそうだ。
(猫間滋)