NYタイムズは「死と病気をもたらす」五輪開催をめぐるメディアの”伝え方”

 7月23日の東京五輪パラリンピック開幕まで100日を切った4月14日、東京都内では24の施設や橋が一斉にライトアップされ……と、本来ならばオリンピック・ムードに染まるところだが、おそらくは誰も「100%開催できる」とは思ってないのだろう。だから、今年1月には「開催しないということのお考えを聞いてみたいくらいだ」と強気の発言をしていた二階俊博・自民党幹事長までが、翌15日にTBSのCS番組で「これ以上とても無理ということだったらスパっとやめなければいけない」と本音を漏らして、慌てて火消しに回るといった体たらくだ。

 一般の国民の多くがそんな冷ややかな目でオリンピック開催を眺める中、これを伝えるメディアも様々な喧噪を繰り広げている。

 政治家の先生同様、「開催」を大前提とした“希望”で動いているのがNHKだ。NHKでは今年度の放送番組編成計画で、「コロナ禍の中での大会実現へ向けた様々な取り組みなどを関連番組で配信していきます」と既に宣言、予算は国会での承認が必要で首根っこを握られているだけに、軌道修正は不可能だ。

「だからNHKではオリンピックを盛り上げようと前のめりなっています。コロナ下で是非が問われている聖火ランナーでも特設サイトを設けてその模様を伝えていますが、“報道統制”が行われていることが発覚して問題になっています」(週刊誌記者)

 その報道統制とは、4月1日に長野県で聖火リレーが行われた際に、一般男性の「オリンピックに反対」「オリンピックはいらないぞ」と叫ぶ声が入っていたのだが、この間30秒、NHKの特設サイトに上げられた動画からは音声が途切れていた。つまりは都合の悪いものに蓋をしていたのだ。

 他方、リベラルで反権力寄りの論調で知られる「東京新聞」では、3月26日に配信した「聖火リレー大音量、マスクなしでDJ……福島の住民が憤ったスポンサーの『復興五輪』」という記事を掲載、その空騒ぎぶりや飛沫飛び交う現場の動画もネットでアップしていたのだが、3日後に削除したことで騒ぎになった。

「東京新聞が件の動画を削除したのは、IOCが求める『3日間ルール』に従ったからです。NHKのように放映権を持っているメディア以外は、聖火リレーの動画アップは72時間までとするという決まりになっています。そこで東京新聞側も渋々このお達しに従ったわけですが、読者からは『権力に屈するのか!』とその弱腰の姿勢を非難する声が上がりました」(前出・記者)

 悪法も法なりということだが、それでも東京新聞はそれらを踏まえた上で削除した理由についての見解を述べた記事を配信。自らの報道姿勢において伝える努力を行うことに賛同の声が上がっている。

 いったん海外に目を向けると日本に向けられた視線はもっと厳しいことが分かる。「ニューヨーク・タイムズ」は12日付けの記事で開催の「再考」を促し、こう主張する。「日本とそれ以外の国々に死と病気をもたらす可能性がある」。これでは疫病神か死神扱いだ。イギリスのガーディアンも同じ日、「この約束は楽観的どころか、全くの間違いのように見える」と、同じく危険性を指摘している。

 二階幹事長が漏らしたホンネに、日本中は誰も「王様の耳はロバの耳」と言えなくなっている状況が伺える。

(猫間滋)

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