トラの至宝・佐藤輝明は「持ってない」!? 実は苦労人タイプか

 阪神・佐藤輝明選手は「持っていない」のかもしれない。

 野球日本代表・侍ジャパンの稲葉篤紀監督が甲子園球場を視察した4月13日。しかし、あいにくの雨模様で試合は中止となり、注目の新人・佐藤の視察も実現しなかった。翌14日に4号2ランを放ったが、稲葉監督の姿はなかった。

「東京五輪に向け、代表選手の最終選考のための視察が始まりました。13日の阪神対広島戦がその第一歩となる予定でした」(ベテラン記者)

 稲葉監督のお目当ては広島先発の森下暢仁投手だったが、報道陣から出た「佐藤はどうか?」の質問にも答えていた。

「遠くに飛ばすというのは、なかなか練習して身につくものではないですし、非常に魅力を持っている選手だと思います」「今は1年目で、プロに慣れようとする最中だと思いますけど、どこまでやれるかと…」

 佐藤は打率2割2分(14日時点)だが、場外弾を含む本塁打4をマークしている。その脅威のパワー、飛距離は折り紙付き。そもそも、侍ジャパンの課題は、外国人投手特有のムービング・ボール。打者の手元で微妙に揺れ、バットに当ててみたら意外と重いというものだ。過去の国際大会ではこのムービング・ボールに苦しめられ、佐藤のようなパワーヒッターの出現を心待ちにしていた。

「まだ早いかもしれないが、将来のためにも代表入りを」

 そんな“待望論”も聞かれた。とはいえ、東京五輪では金メダル獲得が絶対条件となっており、稲葉監督にはそんな余裕はないのかもしれない。また、代表チームの指揮官として、佐藤だけを贔屓することはできないだろう。稲葉監督のコメントは期待こそしているが、「次の国際大会で頑張ってほしい」という意味かもしれない。

 前回、稲葉監督が佐藤を見たのは2月4日の紅白戦だった。まだプロの世界に馴染んでいない時期であり、3打数ノーヒットだった。佐藤は高校時代、“その他大勢の無名球児”だった。大学時代に覚醒したが、そういう経歴を考えると、遠回りをしながら逞しくなっていく側のタイプなのかもしれない。

(スポーツライター・飯山満)

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