中国に日本人1億人の「個人情報」が盗まれた(1)マイナンバーが漏えい!?

 大言壮語が過ぎて失脚した米国前大統領は「中国が米国民の個人情報を盗み取っている」と訴えていた。どうやら、この指摘は大げさではなかったようだ。我が国も同じ脅威にさらされ、すでに日本人の膨大なデータが隣国に「ダダ漏れ」になっているというのだ。

「中国へのオフショア(人件費の安い海外に業務を委託・移管すること)は、業務量や中身が変わりつつあるとはいえ、依然として行われており、日本からの情報流出はいまだ止まっていない。由々しきことだ」

 こう話すのは、ソフトウエアのシステム開発やデータ処理業務などを行っているIT企業を経営するA氏。国会で中国への情報漏洩問題が取り上げられたことを受けての発言である。

 2月17日、衆院予算委員会で立憲民主党の長妻昭議員が日本年金機構に対し、マイナンバーが中国に漏えいしているのではないかと質した。この問題をめぐっては、すでに18年の時点で解決済みのはずであった。当時、同機構が個人データ入力を委託した東京都内の情報処理会社が、その業務を中国の業者に再委託していたことが発覚。特別監査が実施されたが、再委託されたのは500万人分の氏名入力のみで、個人情報流出はないと断じられた。

 だが、長妻氏は特別監査のきっかけとなった告発メールを入手。そこには「個人情報が中国のインターネットで閲覧できる」と記され、個人情報の中身なども付記されていたことなどから、実は流出していたのではないか、と疑惑を追及した。それに対して同機構はメールで言及された個人情報の中身についてこそ正確なものだと認めたが、流出については否定。特別監査の結果を繰り返すかのように、こう述べたのである。

「外部の業者が調査した結果、流出は生じていないと判断された。また、中国の事業者に再委託された情報は、氏名とふりがなのみだったと報告を受けている」

 A氏はこの応答を「茶番」と切って捨て、こう断じた。

「実際は中国への業務委託により日本人の情報が筒抜けになっていて、この状態が長年放置されている」

 A氏がこう語るのも、うなずける。かねてオフショアの危険性を指摘していたからだ。実際、日本年金機構の問題発覚より2年も前、16年6月にA氏は情報流出の実態を公表し、警鐘を鳴らそうとしたのである。

 その頃、筆者は多数の日本人がスパイの疑いをかけられ、中国で拘束された事件について取材を重ねていた。彼らは中国入国直後に拘束されていたのだが、なぜ中国は察知できたのか定かでなかったためだ。諸説あったものの、いずれも納得のいくものではなかった。謎が深まる中、思わぬ方向から証言が寄せられた。

「大多数の日本人の個人情報が中国に漏れ、把握されているからだ。入国時、すぐに身元確認ができてしまうほど深刻な状況にある」

 この証言者がA氏だった。A氏の会社には官公庁はもちろん、銀行や生保、損保、クレジット会社といった金融機関、果てはコンビニチェーンも顧客として含まれていた。かつてオフショアを行ってきた経験をもとに、危険性を周知させようとしていたのだ。

時任兼作(ジャーナリスト)

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