いよいよ2月5日に話題のホラー映画が公開される。「犬鳴村」に続く“恐怖の村”シリーズの第2弾で、すでに先行上映で観た人も多いのではないだろうか。危険な潜入ルポを得意とするライター兼イラストレーターの村田らむ氏が、青木ヶ原樹海の中に位置する村で聞いた信じられない話とは?
清水崇監督の「樹海村」が話題になっている。青木ヶ原樹海を舞台にしたホラー映画だ。樹海の中には何者かが暮らす呪われた村がある、という都市伝説をベースにしたストーリーだ。「呪怨」の清水監督の作品だけあって、ものすごく怖い仕上がりになっている。
ただ、青木ヶ原樹海の中に本当に「村」があると聞いたら、皆さん驚くのではないだろうか?
航空写真で樹海を見ると、精進湖の南のあたりの139号線の道沿いにキチッとした長方形に整備された場所を見つけることができる。
現在の住所だと、山梨県南都留郡富士河口湖町精進5丁目になる。古い住所だと、上九一色村だ。あのオウム真理教のテロ事件で一躍注目された地域だ。
こう書くと、すごく恐ろしい村に聞こえるが、実際に足を運ぶと少々奇妙ではあるものの、恐怖は感じない。
民宿村と呼ばれていて、しっかりしたアスファルトの道路が敷かれ、民宿が林立している。今は廃校になってしまったが、かつては小学校もあった。
筆者はよく青木ヶ原樹海を取材するのだが、その際に宿泊した。よく泊まる「民宿M」はネットのホテル予約サイトで予約することができる。とても近代的だ。
しかし村が出来たキッカケは恐ろしい災害がキッカケになっているという。住人にお話を伺うと、詳しく教えてもらえた。
昭和41年に西湖で村がそっくり沈んでしまうような水害があった。精進湖のすぐそばには居村という村があって、災害にあった西湖の村と非常によく似た環境だったと言う。
居村でも同じような災害がいつ起きてもおかしくないため、村ごと引っ越すことになったという。そして驚くことに、青木ヶ原の真ん中に村を作って引っ越すことになった。青木ヶ原樹海の真ん中を切り開き、住宅を建てて多くの住人が移住した。
引っ越した頃は普通の村だったが、70年代に起きた民宿ブームに乗じる形で多くの家が民宿になったという。読者の中には、
「青木ヶ原樹海の民宿に泊まってどうするの? 自死者のための宿なの?」
と疑問に思う人もいると思う。
聞けば実際に、村に自死志願者が来ることもあるそうだが、それはとても稀なケースだ。多くの人は富士五湖を観光したり、富士急ハイランドや富士サファリパークで遊ぶ時の宿として利用しているという。富士山は一大観光スポットなのだ。
映画「樹海村」を観て青木ヶ原樹海に興味を持った人は、一度民宿村に泊まってみてはいかがだろうか?
(写真・文/村田らむ)