潮の流れと海水温の変化が原因? はたまた大地震の予兆なのか?
11月中旬以降、千葉県九十九里浜の海岸でハマグリが大量に打ち上げられ、それを目当てに連日、県内外から訪れる人々に漁業関係者が頭を悩ませている。
県によればハマグリが断続的に打ち上げられている海岸は、匝瑳市堀川浜から長生郡までの約40キロにわたるエリア。県内の漁業関係者も「過去に台風などで海が荒れたときに打ち上げられることはよくあるが、これだけ大量のハマグリが打ち上げられたことは過去に例がない」と、困惑を隠せない。
九十九里沖は日本でも有数のハマグリ漁場として知られる一方、波が荒く潮の流れが早いことで、毎年、生息環境が変化しやすく、漁獲量の増減も激しいと言われる。
「専門家によれば、貝が打ち上げられる要因として考えられるのは、水温の変化などで貝が弱って、海底の砂の中から出てきたところに、強めの波にさらわれて浜に打ち上げられたという見方が強いだとか。ただ、それだとほかの貝も一緒に打ち上げられなければおかしい。ところが、今回打ち上げられたのは、比較的大きなハマグリばかりだったこともあって謎は深まるばかり。今年6月から発生している横須賀や横浜の異臭騒ぎや地殻変動と関連付けて報じるメディアもあり、野次馬も含めて騒動がさらに広がってしまったというわけです」(地元紙記者)
たしかに、大地震が起こる前には、その前触れとなる「宏観異常現象」が起こる場合が多く、東日本大震災の前にもクジラやイルカが大量に打ち上げられたことが記録されている。
「ただ、それが、いわゆる『宏観異常現象』だったかどうかは、科学的には証明されているわけではありません。ただ、科学的根拠はないものの、無関係とも言い切れないとして、自治体の中には独自調査をしているところも少なくない。おそらく、今回のハマグリも今後は貴重な調査対象になっていくはずです」(前出・地元紙記者)
これらの報道を受け、ネット上では、
《やっぱり、11月の異常な暖かさといい、この異常事態といい、天変地異の前触れなんじゃないの?》《ハマグリだけってのがすごく気になる。他の貝はなぜ打ち上げられなかったのか。何かの前触れっぽい》という意見がある一方、
《大地震の時には同じ現象が起こっていたのならわかるんだけど!何でもかんでも地震に繋げるのは強引!》《潮の流れ、海水温や酸素濃度などいろんなことが影響してるんじゃない?》《簡単な話、夏場はコロナで海水浴場が閉鎖。貝も人がいないから浅場の方に来ていて波で打ち上げられただけ。貝も自力で移動しますから》
などなど、“大地震前兆説”に否定的な意見も多く、さらには、九十九里浜全域は漁業権が設定されているため、一般人がハマグリを許可なく獲ることは禁止されている。にもかかわらず、多くの人々がハマグリを採取して持ち帰っていることが報道されると、
《これって、完璧にドロボーでしょ》《原因がわからないのに、その貝食べちゃうわけ?》《漁業権だけの問題じゃなく、持ち帰りは危険!》とのコメントも。
生物の生態に詳しいジャーナリストも「おそらく事情を知る地元の人は絶対に食べないでしょう」と前置きしたうえで語る。
「アサリやホタテなどの二枚貝は、エサのプランクトンが原因で毒をもつことがあり、毒化した貝を食べると、麻痺や下痢などの食中毒症状を起こします。特に麻痺性貝毒はふぐ毒にも匹敵するほどの強さで、重症だと生命にかかわることがありますからね。打ちあげられた原因がわからないまま食べることは大変危険だと言っていい。通常、毒化した貝は出荷規制されているため、市場に出回ることはありません。そのため、自治体の調査や漁業組合の管理の及ばないところで採った貝は特に注意が必要。しかも、貝毒は熱に強いため、家庭で加熱調理しても無毒にはなりません。漁業権云々ではなく、自分や家族の命を危険にさらさないためにも、絶対に口に入れないことです」
県の漁業資源課では「許可なく採取した場合、罰金20万円以下の違法行為になる」と警告している。漁業権の侵害はもちろんだが、“密漁行為”には命の危険が潜んでいることを覚えておいたほうがよさそうだ。
(灯倫太郎)