「自分はアメリカ空軍パイロットで、カメハメハ大王やエリザベス女王の親類」と名乗り、交際女性に結婚話を持ちかけ、約1億円を騙し取った稀代の結婚詐欺師「クヒオ大佐」(自称)のニュースが、ワイドショーを騒がせたのは90年代初頭のこと。その後、1999年にも逮捕されて週刊誌を賑わせた。
2009年には、半沢直樹役の堺雅人主演で、タイトルもズバリ「クヒオ大佐」として映画化され、話題になったものだ。
そんなクヒオ大佐に被害額は及ばないものの、複数の女性に結婚をちらつかせ、現金を騙し取った28歳の男が10月6日、愛知県熱田署に再逮捕された。
「直接の逮捕容疑は今年1月、出会い系サイトで知り合った名古屋市瑞穂区の女性(29)に仮想通貨の投資話を持ち掛け、『もしマイナスになったとしても俺がその分は補填するよ』などと嘘を言って、現金130万円を騙し取ったというものですが、実はこの男、別の女性8人から、あわせておよそ1400万円以上を騙し取ったとして、すでに8つの事件で起訴されており、逮捕は今回で10回目なんです。とはいえ、28歳で結婚詐欺を”本業”にしていたと考えると、まだまだ余罪が出てくる可能性もあり、所轄署による徹底した取り調べが続いているようです」(地元紙社会部記者)
報道を受け、SNS上には、
《この先11回目、12回目の逮捕もあるでしょう!》《その上手いトークスキルがあるなら他にも仕事があったのでは……》《しかし、28歳で10回目の逮捕って、更生の余地なんか絶対にないね》《お嬢さん達、甘い話に乗っちゃダメ!出会い系で良い出会いもあれば、こういう犯罪に巻き込まれる事もあるんだから、皆さん気をつけて!!》
といった声が上がる一方、
《10回も結婚詐欺をはたらいたということは、あまり長期の懲役を食らっていないから? もっと刑を重くしてください。詐欺にあって死ぬ人もいます》《逮捕されることなど何とも思っていない。絶対に更生しない。短い刑期で刑務所入ってもまた再犯するだろう。せめて10年くらい刑務所に放り込めないものか》
と、結婚詐欺事件に対する量刑の甘さを指摘する声も多かった。
刑法に詳しいジャーナリストが語る。
「結婚詐欺行為とは、読んで字のごとく、結婚をする気がないにもかかわらず結婚をする意思を相手に伝え、結婚の約束を交わしたうえで、金銭などの財物をだまし取るというものです。ただ、結婚詐欺という行為は、刑事事件のなかでも非常に立件が難しい犯罪で、かりに相手とかわした結婚の約束が虚偽であった、あるいは音信不通になったとしても、金銭などの財産に被害がない場合、詐欺罪には該当しないんです。つまり、騙されたとしても金銭が絡まなければ、事件として立件できない。ま、今回再逮捕された男は『仮想通貨をやれば、必ずもうかる。もしマイナスになったとしても、俺がその分は補填するよ』『(投資で)増えたお金で旅行に行こうよ』などといって、実際女性から金を出させていますからね。“令和のクヒオ大佐”は、間違いなく詐欺罪で厳罰に処されるはずです」
同氏によれば詐欺罪は刑法第246条で、「罰金刑はなく、10年以下の懲役刑のみ」と規定されているそうで、
「量刑は、被害額や双方の人間関係、詐欺件数などによって変わり、初犯であったとしても、被害額が大きい場合は執行猶予がつかないこともありますし、今回のように複数回詐欺行為を繰り返すといった悪質なケースでは、併合罪が適用される可能性があり、そうなると量刑の上限が1.5倍になりますからね。まあ、当分は塀の中で暮らすことになるでしょうね」(前出・社会部記者)
ちなみに、先に触れた「クヒオ大佐」は前述のように1999年に10回目となる逮捕。その後、懲役5年の刑に服して現在は出所しているが、消息は謎のままだという。
金銭だけではなく、心までも深く傷つける卑劣な結婚詐欺。騙されないためには、本性を見抜く目を養うしかないということか。
(灯倫太郎)
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