菅総理「苦労人伝説」の虚実と冷徹素顔「人事権で官僚を震え上がらせた」

 寡黙な仕事人間、秋田の農家から出てきた苦労人‥‥国民が菅義偉新総理(71)に抱くイメージはこんなところだろうか。携帯電話料金の値下げなど、聞こえのいい政策を並べ、庶民の味方をアピールしているが、それはあくまで表の顔。冷徹でドケチな一面を掘り下げてみると‥‥。

 まずは目下の新型コロナ対策についても、菅総理は「国として休業補償に応じるつもりはない」旨を明言している。

 菅総理に近いベテラン議員が打ち明ける。

「菅さんはハナから『国は新型コロナ予算を自治体に拠出している。休業補償は自治体がそのカネを使ってやるのが筋』と主張しています。この問題では安倍さんも『安倍ケチ三』と揶揄されましたが、菅さんはそのケチ三以上のかたくななまでのドケチぶりから、支持する議員からも『菅ケチ偉』と陰口を叩かれています。寒波襲来で感染者が急増する中、すわ解散・総選挙、などという事態になったら、有権者にどう言い訳すればいいのかと、皆、頭を抱えていますよ」

 強者に富を集中させて国を動かす。詰まるところ、これがスガノミクスの偽らざる本質なのだ。

 経済アナリストはこう結論づけている。

「菅総理には、独創的で多彩な企業や人が水平方向のネットワークを作り上げながら経済を動かす、などという発想はありません。女性活躍を口にしながら、女性閣僚はたったの2人です。返す刀で、今後は年金給付額の大幅カット、年金支給開始年齢の引き上げなど、庶民の首を真綿で絞め上げるような政策が次々と打ち出されるでしょう。ビンボー人はずっとビンボー人のまま。まさに『国栄えて民滅ぶ』の典型です」

 その菅総理を巡る「苦労人伝説」も実に怪しい。

 秋田の農家の長男として生まれ、地元の高校を卒業後、上京して段ボール工場に就職。しかし、世の厳しさを痛感し、わずか2カ月で退職。その後はアルバイトをしながら大学進学を志し、私立では最も学費が安いとされていた法政大学に進学。卒業後、民間会社に就職したが、政治に目覚めて議員秘書に転身し、横浜市議会議員、衆院議員を経て、ついに日本国総理大臣の座を射止めた。

 これが巷間伝えられる略歴だが、政治家への転身は別として、あの時代、この程度の苦労を味わった庶民は山ほどいたはずだ。

「実は菅さんの苦労人伝説は、最近になって作り上げられたものなのです」

 菅総理に近いベテラン議員はこう指摘したうえで、菅義偉物語の舞台裏をバラす。

「総理・総裁の座が確実視されるにつれ、とりたてて世間にアピールできる物語を持ち合わせていなかった菅さん自身が『よし、苦労人でいこう!』と決めただけのことです。実際、菅さんも自分を苦労人だとは思っていません。ところが、この作戦はみごとなまでに図にあたり、マスコミもこのストーリーに丸乗りした‥‥」

 対して、複数の官邸関係者から聞こえてくるのが、次のような人物評だった。

「官房長官時代、菅さんは内閣人事局に集中させた強大な人事権をチラつかせて官僚にニラみを利かせていました。その恫喝にも近い物言いに、官僚は皆、震え上がっていた。だから菅さんが総理に就任した時、『絶対に人を信用しない男』『絶対に笑わない男』とも評されていた新総理にどうつきあっていけばいいのかと、官僚らは再度、震え上がることになったのです」

 緑色の血しか流れていないと言われるスガノミクス。年末恒例のバラエティ番組ではないが、やはり国民は根性棒でしたたかにケツをシバかれたあげく、トドメのタイキックでノックアウト‥‥そんな笑えない雲行きになりそうなのである。

ライフ