世界の福本豊〈プロ野球“足攻爆談!”〉「打倒巨人」阪神は新庄を呼べ!

 盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!

 巨人のリーグ連覇はまず間違いない。このコラムで坂本、丸が調子を上げてきたら独走してもおかしくない、と予想したとおりになってしまった。優勝マジックというのはついたり消えたりするからマジックと呼ばれるんやけど、今回はよほどのことがないかぎり、順調に減っていくと思う。

 投打のバランスだけを見たら阪神も遜色なかったけど、あっという間にゲーム差を開けられた。大きかったのは守備力の差や。エラーの数は巨人がリーグ最少で、阪神が最多。スタートがよければ捕れるはずの打球をヒットにしたり、簡単に進塁を許したりと、阪神の守備には数字には表れない甘さもあった。甲子園は内野が土で外野は左中間、右中間が極端に広い。この球場を本拠地にして戦うのやから、本来は12球団でも最も守備練習に時間を割かなアカン。ところが、去年も12球団ワーストの102失策の守備は改善されなかった。

 僕はセンターを守っていたから、どうしても近本の守備は厳しく見てしまう。打撃に関しては2年目のジンクスをはねのける活躍をしているけど、守りははっきり言ってもの足りない。9月7日の巨人戦(甲子園)では、矢野監督にも「今日は近本で負けた」と言われてしまった。3回一死満塁の浅いセンターフライで、三塁走者がタッチアップをあきらめているのに本塁に悪送球。4回一死二、三塁では再び浅いセンターフライで、叩きつけるような3バウンドの送球でタッチアップを許した。これは起きるべきして起きたミス。ふだんの守備練習から高い意識を持って、課題を克服していかないと、今後も同じミスを繰り返す。

 まず捕球体勢から見直さないとアカン。捕球する時のグラブの位置が体から離れすぎ。だからすぐにボールを握れない。半身の体勢で、すぐにボールを握れる位置で捕球すれば、三塁走者の動きを見る余裕も出てくる。それに落下点に入るのも遅い。打球を見ながら追いかけるのではなく、素早く反応して、一直線で入らないといけない。そして、取ったらすぐに内野に送球する。これは走者がいない時から、やっておかないといけない。試合の打球は、ふだんはできない最高の練習になるんやから。

 僕は若い頃、センターの守備で1球ごとにスタートを切らなかったり、走者がいない時に横着して両足をそろえて捕ると、ベンチに帰った時に頭を小突かれた。コーチが常に目を光らせていたから選手が育った。叱られた選手が今度はコーチになって、同じように選手を教えるから、阪急の外野守備力の高さは伝統となった。山森、本西、イチローらが名手と呼ばれたけど、ふだんはDHの石嶺も守らせると普通にうまかった。今はオリックスも伝統がすたれてきたけど、阪神にはそういうふうに教えられるコーチがおらん。

 プロ野球復帰を目指している新庄が、外野手のレベルが下がっているとテレビで言っていたけど、そのとおり。コーチももっと勉強しないと。新庄はちゃらんぽらんに見えて、守備練習はしっかりしていた。守ることが好きやったし、状況に応じた守備位置や、どうしたら走者を殺せるかなど必死で考えていた。「好きこそ物の上手なれ」と言うけど、まずは守備に興味を持たないと。古巣の阪神も1回、臨時コーチで呼んでみたら、近本らにいい刺激を与えるかもしれんな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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