カリスマ飲食プロデューサーに「金銭トラブル」(1)羽田の再開発計画で発覚

 複数の大企業と東京・大田区が連携し、現在進行形で推し進められている、日本の玄関口を舞台にした「再開発プロジェクト」。その内部で、公にすることがはばかられるような巨額の金銭トラブルが起きていた。その全内幕を明らかにする。

 今年7月3日、各交通機関で羽田空港までひと駅の天空橋駅に直結する複合施設「羽田イノベーションシティ」がひっそりと開業した。大手ゼネコン社員が言う。

「大田区が土地を運営企業である『羽田みらい開発株式会社』に貸し付け、今夏開催予定だった東京オリンピックのインバウンド需要を見込んで建設しました。『みらい開発』には、鹿島建設や大和ハウス、JR東日本、京浜急行、野村不動産など大企業が出資者として名を連ねている。グルメやショッピングほか多岐にわたる日本文化の発信をコンセプトとし、渡航客向けのホテルやオフィス機能も有する、非常に巨大な再開発プロジェクトです」

 コロナ禍で開業延期になった店舗も多く、現時点での認知度は高くないが、五輪開催が予定どおりであれば大きな注目を浴びていたことは間違いなく、新たな名所と呼ぶに足る施設になるはずだった。

 その目玉の一つだったのが、そばやうなぎといった和食の有名店とコラボし、まるでフードコートのように「名店の味」が楽しめるレストラン「羽田昔ばなし横丁」だ。アサ芸はこのたび、同店を巡るトラブルが勃発していたという情報をキャッチした─。

 飲食店などの設計・施工を行う都内企業勤務の小林氏(仮名)が、怒りの声を上げる。

「『横丁』は我が社が設計を請け負ったのですが、それに対する報酬が一切未払いなうえ、著作権を有する内装の設計図を無許可のまま使用し、工事が進められたのです」

 この「盗用」が事実とすれば、あまりにもデタラメすぎる。小林氏がコトの経緯を振り返る。

「発端は、昨年6月末でした。『横丁』の運営を行う会社『有限責任事業組合日本昔ばなし横丁』の実務担当者であるAという男と知り合い、話を持ちかけられたのです。Aのオファーは『設計と施工、それにB工事(空調や排水・排気、防水設備などの工事)を全て込みで3億8000万円の予算で請け負ってほしい』というものでした」

 言うまでもなく、大きなビジネスだ。可能な範囲でコストを抑えれば、それがそのまま利益を生む。ただし、小林氏は一度この申し出を断ろうとした。

「着工前の重要な『確認変更申請』という、手続きに必須となる図面の提出日が迫っていたからです。期限は7月15日、半月後でした。当時のAは別の設計会社に『図面の提出には4カ月かかる』と言われ、途方に暮れていました。とはいえ、我が社にとってもチャンスであることは間違いない。最善を尽くそうと外注業者を各所あたり、『みらい開発』側の担当者とのネゴシエイトまで私がして、どうにか7月末まで期限を延ばし、提出のめどをつけることができた。こうして設計を請け負うことにしたのです」

 そして、小林氏の決断を後押しした大きな要因はもう一つあった。それは『横丁』をプロデュースするのが、カリスマと称される飲食プロデューサー・X氏であったことなのだ。

※カリスマ飲食プロデューサーに「金銭トラブル」(2)に続く

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