東京ヤクルトスワローズが元阪神で、現在は四国アイランドリーグプラス・香川の歳内宏明投手を獲得する。正式発表は9月になるという。今さらだが、今季はコロナ禍により過密日程となっている。その負担を軽減する措置として、トレードや外国人選手の獲得といった支配下登録の期限が通常の7月末日から9月末に延長された。“特例措置”が歳内のNPB復帰願望を叶えたと言っていい。
しかし、相当な重圧を背負わされることになりそうだ。
「ヤクルトのチーム防御率は12球団ワーストの4・85(8月28日時点)。補強費のある他の球団なら、外国人投手か、大型トレードを仕掛けてきます。ヤクルトのチーム事情で独立リーグからの補強となったようですが、投手事情を考えると、歳内を試合で使うつもりなのは間違いありません」(ベテラン記者)
歳内が崩壊したヤクルト投手陣を救えるかどうか…。それは、NPB球団から戦力外を通達された選手の進路にも大きな影響を与えそうだ。
「戦力外通達を受け、独立リーグ入りする選手も珍しくなくなりました。独立リーグで活躍し、NPBに復帰しようと頑張っています」(前出・ベテラン記者)
改めて調べてみたが、四国アイランドリーグプラスが誕生したのは、2005年。以後、ルートインBCリーグなど独立リーグ組織も増え、そこでプレーした“元NPB選手”はゴマンといる。しかし、NPB帰還を果たした選手は、歳内が9人目。独立リーグを経験したNPB選手で現在も現役を続けているのは、阪神・藤川球児、千葉ロッテ・三家和真(元広島)、DeNA・古村徹の3人。復帰第一号の山田秋親(10年)にさかのぼって、帰還後の成績を調べてみたが、一軍戦力として誇れる成績を残しているのは、藤川だけだ。
「現役を続けるため、独立リーグに転じた選手たちの気持ちはわかります。学生、社会人チームから独立リーグ入りした選手たちもNPBに進むことを目指しており、元NPB選手といっしょにプレーすることで刺激を受けています」(球界関係者)
独立リーグからプロ生活をスタートさせた選手はともかく、元NPB選手は練習環境の違い、移動の大変さで気持ちが萎えてしまうかもしれない。
歳内は香川で開幕投手を務めた。ここまで9試合に登板して、5勝0敗。防御率0・42と圧倒的な成績を残している。阪神を解雇された一因とされる右肩痛も癒えたようだ。ヤクルトで活躍できなければ、独立リーグ入りした元NPB選手の帰還はゼロになってしまいそうだ。
(スポーツライター・飯山満)