新型コロナウイルス感染拡大により「夜の街」では様々な異変が起きている。感染リスクの懸念からか”接待を伴う飲食店”では客数が軒並み減少し、経営者は頭を抱えながらもなんとか営業を続けるための道を模索している。多くのクラブが経費削減のために出勤するホステスの人数を減らしており、売り上げのあるホステスから優先的に出勤させ、売り上げが見込めないホステスは出勤することすらままならない状況だ。
「客を連れてこれる人以外は出勤しないでっていうのは4月からずっと続いてますね。営業LINEしようにも、役職についていてお金持ってるいわゆる”太客”は、感染した場合の仕事への影響を気にしてなかなか店に来てくれないし。以前はレギュラー出勤だったけど、今は同伴の予定がある日でないと出勤させてもらえないです」(クラブ勤務の女性)
シビアに売り上げが求められる現状で、末端のクラブ嬢たちの生活は困窮している。
「艶系クラブでは女の子それぞれに役割があります。大きいお金を落としてくれる”太客”一本釣りの子や、指名本数をたくさん稼ぐ子。彼女らは自分の力で客を呼び大金を稼ぐいわゆる花形のクラブ嬢です。そんな中、コロナでもっとも苦渋を味わっているのは、自分で指名客を囲うことをせず、それなりの給料をもらうために売れっ子たちの席での手伝いに徹する”ヘルプ嬢”です。彼女たちは営業力には欠けますが、どんなお客様にも対応できる”コミュニケーション力”はピカイチ。人気嬢もそういう”ヘルプ嬢”の協力なくしてはやっていけないし、店としてもなくてはならない存在だと思っているのですが、申し訳ないけど、客の来ない状況で真っ先に切るのは彼女たち”客を持っていない嬢”になってしまうわけです。彼女たちの中には店を辞めていく子も多いです」(クラブ経営者)
そのような状況の中、コロナ禍で行き場をなくしてしまった”ヘルプ嬢”たちが、性産業界に行き着くケースが増えている。長らくピンク店に勤務する女性はこう言って危機感をあらわにする。
「接客クラブあがりの新人が続々入ってきています。美人で“コミュ力”最強の元クラブ嬢なんかが入ってきたから、客の指名がどんどんそっちに流れて、新規客の指名は総取り状態です。業界ではクラブあがりの新人を畏敬の念を込めて”モンスター”って呼んでます。私らは性サービスの提供だけで、客にニコニコと愛嬌を振りまくような接客なんてしてこなかったけど、それができちゃう新人がどんどん入ってくるもんだから、大変ですよ。ただでさえ客が少ないのに、クラブ出身の女性たちに、もともとピンク嬢だった私たちの仕事が奪われちゃって…」
コロナの影響で夜の街では今、職種をまたいで熾烈な客の取り合いが続いている。女性たちのセーフティーネットとも言われてきた性産業だが、今後その役割を果たせなくなるのも時間の問題かもしれない。
(浜野ふみ)
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