コロナ禍の中、MLBが約4カ月遅れでスタートした。今季は例年より100試合も少ない60試合となり、対戦も同地区のみに限られる異例のシーズンとなった。
レイズの筒香嘉智(28)が8月13日(日本時間、以下同)のレッドソックス戦で、開幕戦以来となる15試合、53打席ぶりの2号2ランを放った。とはいえ、ここまで筒香の成績は2本塁打、11打点、打率1割8分2厘と低迷中(日本時間8月14日現在、以下同)である。
筒香がメジャー挑戦へ名乗りを上げた昨オフ、水面下で猛アタックを仕掛けたのが、レイズのニアンダーGMとキャッシュ監督だった。現場とフロントのツートップが筒香の映像を見て一目ぼれし、その姿をレジェンド・松井秀喜氏とダブらせて「ニュー・ゴジラになれる」と踏んで即座に獲得へと動いたという。
しかし、いざ蓋を開けてみると、調子はなかなか上がる気配がない。その要因について、同じア・リーグ球団の極東スカウトは「メジャー特有のムービング(動く)ボールに苦戦し、アジャスト(適合)できずにいる」と分析し、気になる懸念材料を口にした。
「このまま打てなければ、あの松井氏と悪い面で同じ道をたどってしまう可能性がある。松井氏は現役最後の12年にレイズでプレーしたが、マイナー契約からシーズン途中の6月下旬にメジャー昇格した直後、2本塁打を放って、タンパの地元紙は絶賛の嵐を送りました。しかし、以降は打撃が低迷。打てなくなったとたん、手のひら返しで猛バッシングを開始したんです」
実をいえば、タンパのメディアは近年のレイズが強豪チームとして定着したこともあって、こと野球に関しては、同じア・リーグ東地区のニューヨークやボストンにヒケを取らないぐらい、その舌鋒の鋭さで有名なのだ。
「そんなタンパメディアの論調に後押しされる形で、地元ファンも松井氏が本拠地の打席に立つたび激しいブーイングを浴びせるようになった。NYメディアのバッシングにも慣れているはずの松井氏ですら、当時はメンタルをやられてしまったともっぱらで『それが彼の引退の道を早めた』との指摘まであるほど。筒香はその松井氏の再来として期待されながら同じように苦しんでいるだけに、『タンパ地元紙の洗礼』が心配される」(極東スカウト)
コロナ禍の変則シーズンのため、MLBの試合日程はすでに3分の1を消化。少ない試合数で未経験の筒香が今後調子を上げ、結果を残していくことは想像以上に困難な挑戦と言えるだろう。ただし、先行きは不安ばかりではない。
「すでにバットの芯で捉えることができれば長打力の持ち主であることは実証済み。レイズは基本的にローコスト、ハイリターンをカラーとするので、性格のいい生え抜きが多く、プライドをひけらかすようなタイプのスター選手はいない。自分にラブコールを送ったキャッシュ監督も含め理解者は多いので、筒香にとって移籍先として最高の環境であることは間違いない」(極東スカウト)
本領発揮はこれからだ。