盗塁王13回、シーズン歴代最多となる106盗塁、通算盗塁数1065と輝かしい記録で「世界の福本」と呼ばれた球界のレジェンド・福本豊が日本球界にズバッと物申す!
控え野手を敗戦処理で登板させた巨人・原監督の采配が話題になった。8月6日の阪神×巨人戦(甲子園)。11点差の8回一死から、足のスペシャリストの増田がマウンドに送られた。これに投手出身のプロ野球OBから批判的な意見が上がった。投手の視点からすると、神聖な場所とか、プライドの問題とかいろいろあるんやろな。でも、僕は「別に野手が投げてもいいんちゃうの」という考えやね。
今年は球宴休みのない過密日程で、ブルペンもスタミナ勝負の面がある。あの場面で抑えても、たとえ打たれても、試合は決まってしまっていた。勝ち試合用のリリーフ投手のムダづかいを避けたい原監督の考え方は理解できる。
それに増田の投球もそこまでひどくなかった。高校時代まで投手をやっていただけあって、変化球でストライクも取れていた。投手なら敗戦処理で登板するのは気持ちが入らないかもしれんけど、増田は行けと言われて「ハイ」と二つ返事で喜んで登板したはず。僕は球も速くないし、登板経験がないけど、1回ぐらいプロのマウンドに立ってみたかったと思う。イチローだって、オールスターで仰木さんのファンサービスで登板した。あの時はノムさんが嫌がって、代打に投手の高津を送ったけど。
でも、そもそもセ・リーグでは投手も打席に立つんやから、野手の登板が「失礼」というのはおかしい。大谷の二刀流が認められているんやから、増田の敗戦処理と代走の二刀流だっておもしろいやん。高校時代まで投手経験のある選手は多いし、「困った場合は僕が行きますよ」とアピールする選手がいればベンチも助かると思うで。
原監督も「批判したければいくらでもどうぞ」という感じやろな。坂本にも送りバントさせるなど、勝負に徹したなりふりかまわぬ采配はある意味、立派。監督として実績を残してきた自信があるから、何を言われてもブレない強さがある。実際に今年も開幕からペナントレースで優位に立てているのは「原采配」によるところが大きい。
考えてみたら、巨人だって計算外のことのほうが多いんやから。特に坂本と丸の「サカマル」が2人して打率が2割5分を下回る大不振に陥っている。そんな状態でも首位に立っているんやから、2人が復調したら優勝争いをぶっちぎってもおかしくない。
丸も坂本も高い技術を持っている打者やし、急にスイングが悪くなったわけではない。試合に出続けているうちにいずれ上がってくる。坂本は開幕前にコロナの陽性反応が出て急仕上げになったけど、それはあまり関係ないと思う。打席内容を見ていると、2人とも今はタイミングがちょっとズレているだけ。何年も打率3割を打つような打者は必ず帳尻を合わせてくる。
巨人で言えば、4番の岡本と、エースの菅野の存在も大きいな。岡本は24歳にして風格みたいなものが出てきたし、ほんまにどっしりしている。菅野も昨年は頼りない投球が多かったけど、今年は体調がよさそうやし、エースらしい投球をしている。
4番とエースがしっかりしていれば、大型連敗はしにくい。今年のセ・リーグはCSがないから、優勝以外は2位も最下位も同じ。他の5球団は巨人を走らせないよう、包囲網を張らなアカンで。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。