TikTokも槍玉に!習近平「超長期政権」表明で変わる米中経済戦争の行方

 8月24日には「第2次安倍政権」が発足してから2799日が経ち、「連続在任日数」の記録を塗り替えることになる。そして隣国・中国に目を向ければ、習近平国家主席の超長期政権の可能性を論じる声も出始め、早くも「米中経済戦争」の長期化を占う論調が広がっている。

「習近平が2035年までの超長期政権を狙っている」

 との見方が広がったのが7月末、中国国営テレビのCCTV(中国中央電視台)が7月30日に行われた中央政治局会議の模様を伝えたニュースによってだ。

 同会議は月1で開催されるものだが、今年は1月25日が春節だった中国において、7月は1年の折り返しにあたるため、半期の方針を巡る重要な意味を持つ。そしてここで決められたのが、今後の通常のスケジュールとは若干、異なったものであったこと。その上で、「2035年の長期目標」が発表されたからだ。2035という数字はこれまでも時折、言及されていたが、今回は具体的に触れられた。そのことで、習近平の“本気度”がここで垣間見られるのではないかという見方が広がった。

「2012年に習近平が政権トップに就任以来、2015年にはアメリカに対抗した製造業の高度化を目標にした『中国製造2025』を打ち出しました。その後、中国のとりわけTech企業が計画通り大きく飛躍したのは今の通り。そしてトランプが大統領に就くと、この考え方で米中が対立、ファーウェイ排除に乗り出すなど経済戦争に発展したのも同じく現状通りです。一方、今度は2017年の共産党大会から習近平は『中国標準2035』ということを言い出すようになりました。これは、AIや5G、ロボット、自動運転、宇宙開発など、今後の産業で中国が世界標準となって覇権を握ろうという計画です」(中国事情に詳しいジャーナリスト)

 習近平は第2の「建国の父」にでもなろうというのか、2035年には、習近平は毛沢東が亡くなった時と同じ82歳になる。さらに来年は中国建国100周年で、22年には書記長の任期が切れるが、米中経済戦争は今後も更なる泥沼化はほぼ必至。トランプはトランプで11月に行われる大統領選挙へのアピールで、米中総領事館の閉鎖合戦を行ったり、中国が周辺国との領有争いを行ってきた南沙諸島問題に踏み込んだ姿勢を表すなどヒートアップしきりで今さら退くわけにはいかないという状況がますます高まっている。2018年の全人代(全国人民代表大会)では憲法を変えて国家主席の任期の制限を撤廃したので、理論上は半永久的に政権トップに君臨できる道も用意されている。

 となるとトバッチリを受けるのは戦争の“最前線”だ。目下の戦場の1つがTikTokなどの中国資本のTech企業を巡る取り扱い。8月6日、トランプは安全保障上の脅威として、TikTokを運営するByteDance(バイトダンス、北京字節跳動科技)と中国のSNSのWeChat(ウィチャット)を運営するテンセントとの取引を禁止とした。そしてTikTokに関してはアメリカにおける事業の売却をしない限り利用を禁止するとした。

「もともとバイトダンス側は、中国共産党からのアメリカにおける事業の独立性は守られていると主張していましたが、6月に行われたトランプの集会がTikTokを利用するK-Popファンの悪戯により空席が目立つものとなってしまったためにトランプの怒りをかいました」(フリージャーナリスト)

 と、もはや目の敵にされ、そのトバッチリは今度はTikTokの買収に名乗りを上げたマイクロソフトにまで及んでいる。

「一部のアメリカの高官からマイクロソフトは『中国寄り企業』と受け取られる発言がされています。同社はGAFAより先んじて中国に進出、92年に北京事務所を開設して意外に歴史は長く、3つの大きな研究所を持ち、中国企業への投資も多く関係は深いですから」(前出・ジャーナリスト)

 何かと口実をつけてTech企業が槍玉に挙げられる昨今、諍いの場では中国との距離を踏み絵に「敵・味方」が分けられようとしている。

(猫間滋)

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