賞味期限切れ商品と交換も!? 現役Gメンが明かす「エコバッグ万引き」驚愕手口

 全国でレジ袋有料化スタートから1カ月半、エコバッグを使った新手の万引きが急増し、問題になっている。

 レジ袋の有料化は一部で今年初めからスタートしていたが、NPO法人「全国万引犯罪防止機構」(東京)が3月に全国のスーパーやコンビニ計319社に対し、行ったアンケートによれば、既にその時点で「マイバッグ万引きが増えてきている」との回答が、全体の約37%に当たる117社にも及んだ。

「当然のことですが、7月以降は、その数がグッと増え、多い日には1日4〜5人の万引き犯を捕捉していますからね、この先どうなることやら」と語るのは、現役万引きGメンのA氏。10年で2千人以上を捕捉してきたベテラン保安員はこう語る。

「『エコバック万引き』の手口は、大きく分けて2つ。一つは、レジを通さずにサッカー台に行ってそのままエコバッグに詰めてしまうケース。もう一つは、一部商品をエコバッグに入れ、残りは通常通り会計するというケースです。どちらも手口は大胆ですが、実は意外に見破りにくい。というのも、マイバッグが膨らんでいたとしても、一見しただけでは中身がわからず、もしかしたら私物が入っているかもしれない。怪しいというだけでは所持品検査はできませんし、仮にそれらしき商品が入っていたとしても、『他店で買ったものだ』『既にお金を払ったが、レシートはなくした』と言い張られた場合、その店から取られた商品なのかどうかを判断するのが難しい。我々としては、商品を入れた瞬間を見つけて、店を出たところを現行犯で捕まえるしかないので、エコバックの普及で精神的にも時間的にも負担が増えたことは間違いありません」

 スーパーやドラッグストア、ホームセンターなど、あらゆる店に出没する万引き犯。彼らがターゲットにするのは8割が食品だという。

「万引き犯の多くは、比較的高価で隠しやすい小さなものを狙います。高齢者の場合は特に和牛肉や高級刺身のパックなど、買うのがもったいないちょっとした贅沢品が多いんです」(A氏)

 なかには自宅で保存していた何年も前の賞味期限切れの食品をマイバックに入れ持参し、新しい商品と入れ替えてしまう猛者もいるそうだが、

「これはひとつ間違えたら、食中毒などで他の客が命の危険にさらされかねない行為。それを家にあってもったいないから、という理由だけで行うなんてね。とんでもない話です」(A氏)

 もちろん、万引きは立派な犯罪。2006年には法律が改正され、それまで科せられていた10年以下の懲役刑のほかに50万円以下の罰金刑が新たに加わったが、

「常習者のなかには何度も捕まって、その都度罰金を払っている人間もいる。でも、またやるんですね。で、そういう輩に限って、『罰金を払って金がなくなったから』とうそぶく。エコバックが普及したおかげで、常習犯から素人まで、そんな”懲りない輩“が増えているんですよ」(A氏)

 最近、スーパーなどでは「エコバック万引き」対策として、購入前の商品と会計を済ませたものとをカゴの色で区別をする、という方法をとっている店も多いが、これとて、完全な防止方法ではないという。

「そもそも、かつての日本では買い物かごが主流で、70年代に入ってからスーパーなどでレジ袋が無料配布されるようになったのは、万引への対策という一面もある。それが、今回の有料化とエコバックへの移行により、元へ戻ってしまう恐れがあるということです」(A氏)

 プラスチックが減る代わりに、万引きが増える。この、いたちごっこの行方はいかに……。

(灯倫太郎)

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