「2020年、人類の半数が伝染病に——」そんな見出しが躍る30年前の岐阜新聞が同紙のWEBサイトに掲載されたのは7月27日のこと。記事は1990年5月2日の朝刊で、世界保健機関(WHO)が地球温暖化の健康被害を予測し、報告書としてまとめたものだが、その内容がまるで、新型コロナウイルスのパンデミックを予測していたかのようなことから、SNS上では、《怖いくらい当たってる!》《人類の半数が……って、見出しがショッキング過ぎる!》といった書き込みが相次ぐ騒動になった。
そういえば、最近よく、コロナ禍を”予言していた”とされる人物や書物、映画などの記事を目にする。
7月24日には東スポWebが「中国の“ノストラダムス”劉基が650年前にコロナ蔓延予言していた」という記事を配信。記事によれば、劉基は『三国志』にも登場する、明の初代皇帝・朱元璋に仕えた軍師で、風水と方位学を用いた『奇門遁甲』という占いで、未来を予知する能力があったのだとか。そんな劉基が記したとされる碑文には『湖廣遭大難(湖廣が大きな災難に遭う)』とあり、それが湖北省や湖南省辺りの省都、つまり“武漢”にあたり、さらに『難過豬鼠年(猪年と鼠年を無事に過ごすのは難しい)』とあることから、昨年の干支がイノシシで今年がネズミなので、その冬に疫病が蔓延すると解釈。で、要約すると『2019年の冬から武漢で疫病が発生し、天地がひっくり返るような災害となり、大勢が死ぬ』と、いうわけだ。他にはインドでもキャリア25年のベテラン占星術師が、2019年6月、ツイッターに「欧米諸国で伝染病が流行する。19年11月以降に徐々に広まり始める」と投稿していたとされ、台湾では32年前に出版された短編小説集『海天龍戦』が、現在のコロナ禍を「予言」したものだとして注目されている。
さて、ここにきてにわかにクローズアップされ始めた、「予言」だが、認知心理学に詳しいジャーナリストはこう語る。
「一般的に、予言にはポジティブなものより、『地震が起こる』や『火山噴火が……』といったようなネガティブなもの方が多いですが、これは、たとえ外れても、誰も文句を言わないからなんです。悪い予言の代表には『終末予言』があり、たとえば、マヤ暦をもとにした人類滅亡説や、聖書を元にした終末予言、あるいはピラミッドの通路の寸法を元に記されたハルマゲドンと、それこそ多種多様なんです」
なかでも有名なのが、”1999年7月に恐怖の大王によって人類が滅亡する”とし、世間を騒がせた、あの「ノストラダムスの大予言」。だが、前出のジャーナリストによれば、
「ノストラダムスは1999年7月と具体的な発生月を断言していますが、大半の予言にはそれがない。たとえば、『鉄の鳥の攻撃によってアメリカの兄弟は落ちるでしょう。茂みで狼達が吠え、無垢な人々の血が流れるでしょう』と、アメリカ同時多発テロを予言したとされる、盲目の予言者ババ・ヴァンガもそれは同様です。これは期限と表現を明確にしないことで予言が的中したかのように見せる『マルチプルアウト』という手法で、曖昧な言葉を使っているのでどのようにでも解釈出来るし、期限を指定していないため”当たるまでは有効”という性質がある。つまり、予言とは解釈を楽しむエンターテインメントと考えたほうがいいかもしれませんね」
なるほど。やはり、予言は話半分。当たるも八卦、当たらぬも八卦、ということか……。
(灯倫太郎)