AP通信社とソニーが独占契約!報道と5Gの融合にキヤノンとニコンが抱く危機感

 アメリカを代表する通信社のAPが7月23日、ソニーと2年間にわたる撮影機材の独占契約を結んだと発表した。世界中に約250カ所の拠点を持つAP通信では毎日3000点の画像と200点の映像を配信しているが、今後はそのすべてがソニー製カメラで撮影されたものとなる。

「この契約で注目されているのは、5Gの実地テストを含めた現場オペレーションでも協業するということ。AP通信のプレスリリースではソニーのスマホ『Xperia』についても触れており、いずれはスポーツ写真や報道写真をカメラに接続したXperiaから5G経由でサーバーにアップしていく使い方も想定されます。そうすればメモリーをパソコンで読み込んでから転送するという手間も省けますし、動画の場合は5Gを使った現場中継が当たり前の手段になっていくのではないでしょうか」(IT系ライター)

 いまだに一眼レフが幅を利かせる報道写真の世界では、キヤノンとニコンの日本企業2社が世界市場をほぼ独占していた。この牙城には伸長著しい中国や韓国のハイテク企業もまったく歯が立たなかったが、そこに割って入ったのがCMOSイメージセンサーで5割超の世界トップシェアを誇るソニーだったのである。もとよりソニーは業務用ビデオカメラで世界トップのシェアを持っているうえ、報道分野では動画と静止画の融合が進んでおり、ソニーは有利な立場にあると言えそうだ。

「もちろんキヤノンとニコンがソニーの独占契約を指をくわえて眺めているわけもなく、両社はスマホメーカーなどとタッグを組んでソニーに対抗することになりそうです。ただし5Gの現場ではアメリカ主導による中国外しが進んでおり、ファーウェイと組む可能性はほぼなさそう。そうなると韓国のサムスンやLGの動向が気になるところですが、文在寅大統領の強硬な反日姿勢により日韓関係は隙間風の吹いている状態ゆえに、一眼レフ×スマホの日韓タッグは前途多難かもしれません」(前出・IT系ライター)

 ニコンの映像事業は2020年3月期に171億円の営業赤字を計上しており、同社では以前から買収の噂も少なくない。戦艦大和にと搭載されていた「測距儀」を製造していた日本光学から続く伝統が、海外企業に買われてしまう事態はありえるのだろうか。

(北野大知)

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