ミリタリーマニアの間で垂涎の的とされるのが、実際に軍隊で使用された装備品や軍服といった、いわゆるオフィシャルものだ。だが、ミリタリーショップなどで扱われる「限定モノ」の中には、出所が不明のまがい物も少なくないという。
と、そんな中、正真正銘の自衛隊装備品のオークションが7月26日、東京・市谷の防衛省講堂で初めて実施された。全国紙記者が語る。
「このオークションは、『厳しい財政下で財源確保を』という、河野太郎防衛相の肝いりで開催されたもので、出品されたのは、陸、海、空各自衛隊から武器など危険なものを除く21点。オークションには590人が応募し、抽選で450人が当選したんですが、東京での新型コロナの新規感染者の増加傾向もあり、河野氏が都外からの参加を自粛するよう呼び掛け、結果、当日の参加者は200人ほどに限定されました。それでも、ファンにとってはすべてが垂涎の品ですからね。開始前から会場は異様な熱気に包まれていましたね」
河野氏は冒頭「今まではスクラップにし、鉄くずのようにして売却していました。興味のある人に引き取ってもらい、売り上げにもなれば一石二鳥になる」とアピール。さっそく、オークションがスタートしたが、練習艦「やまゆき」の舷門表札は、1万円から始まり、瞬く間に53万円という値がつき落札。輸送機「C−1」のパイロットが使用した航空ヘルメットや酸素マスクなどのセットは3万円からスタートし、この日最高額の66万円で落札された。
「ほかにも、『やまゆき』操舵輪が52万円(競売開始時2万円)、空自のC1輸送機操縦かん50万円(同1万円)、さらに、陸上自衛隊の観測ヘリコプター『OH6D』銘板32万円(同1万円)などなど、落札総額はなんと581万円。河野氏も『望外の金額だった』と満足気でしたが、その言葉通り、第一回目のイベントとしては大成功といったところでしょう」(前出・全国紙記者)
この報道を受け、SNS上には、《税金で購入したものを売るのはおかしいでしょ?こんな事して防衛費捻出するなんて終わりだな》《「省独自での財源の確保」は建前だ。大学サークルの遊びじゃない。数兆円の予算を必要とする防衛省で580万の財源になんの意味があるのか?》《こんな事で自衛隊の費用を捻出しなくても、国会議員の給料減らして、自衛隊にあてがえばいいんじゃねえの?》といった厳しい意見がある一方、大半は、
《河野大臣いいですね!マニアの人はきっと大喜びですよ。少額ですが少しでも自衛隊の方々の待遇改善になれば最高ですよ》《不要品ならば売ってしまいましょう。元は税金だけど、不要品として棄てるよりは税金の節約になると思います》と好意的で、さらには……。
《廃棄するものでも、愛好家には価値あるもの。愛好家なら“現役時代”と変わらず大切に扱ってくれるでしょう。国防に役立ってくれたパーツ達も幸せじゃないのかな。愛好家をくすぐる“政策”、防衛史上初なのでは。単に売り上げでなく、国防の重要性をより身近なものとする戦略を感じます。応援します》と絶賛するコメントも少なくなかった。
前出の全国紙記者が言う。
「現在、海外では兵器として利用の出来ない小型トラックや偵察バイク、トレーラーなどがオークションで堂々と出品され、旧型戦車も実弾が発射できないようにされ、販売されていますからね。今回の売り上げについて河野氏は、自衛隊員の生活や勤務環境の改善に充てられるよう財務省と相談する、としていますが、今後2回目、3回目があるのかどうか。いろいろな意味で今後が楽しみですね」
巨額の税金を投じたキャンペーン「GoToトラベル」では大ひんしゅくを買ったが、今回の“還元イベント”は高評価で幕を下ろしたようだ。
(灯倫太郎)