トランプ大統領「再選」に追い風、失言連発で対立候補に“認知症疑惑”噴出

「スリーピー・ジョー」

 昨年4月、米民主党でオバマ政権時に副大統領を務めたジョー・バイデン氏が今年行われる大統領選挙に立候補した際、トランプ大統領は彼のことをこう表現し、次のように語って挑発した。

「ようこそスリーピー・ジョー(寝ぼけたジョー・バイデン)。私は君が予備選を成功裏に戦える知性を持つことをのみ望む」

 高をくくっていたトランプ氏だが、11月に控えた大統領選を前に陣営は火の車。理由はもちろん収束するどころかますます拡大するコロナ禍と、白人警察官の暴力に端を発する人種差別への抗議運動がアメリカ全土に発展した際の対応のマズさ。6月末にニューヨーク・タイムズが行った世論調査によれば、バイデン氏の支持率は50%で、トランプ氏の36%を上回り、勝敗の鍵を握るとされる6つの激戦州で全てバイデン氏が上回った。

 ところが今、バイデン氏のその「知性」を疑う動きが見られている。現在77歳で、大統領選挙がある11月には78歳を迎えるバイデン氏に「認知症疑惑」が持ち上がっているのだ。

「発端は6月30日に行ったバイデン氏の集会とその後に行われた会見でした。コロナは風邪に過ぎないという姿勢を崩さないトランプ氏に対し、バイデン氏は感染症対策で“巣ごもり”を決め込むという全く対照的な選挙運動を行っていましたが、3カ月ぶりに久々に人前に出てきたバイデン氏にFOXテレビが『認知の衰えについて(きちんと医者に)テストを受けたことがあるのか』と質問しました。これに対しバイデン氏は、『(政治家は)いつもテストされている』と一般論で答えたことで一気に認知症疑惑が広がったんです」(全国紙記者)

 もともとFOXテレビはトランプ寄りの報道をしてきたこともあって、こうした疑惑を演出するような報道姿勢に、他のメディアから非難の声もあがったが、FOXが「認知」について尋ねたのはけっして根拠ゼロの“愚問”などではない。同じ6月中に行われた世論調査で、およそ4割の有権者がバイデン氏は認知症なのではないかと思っている結果が出ていたからだ。

 なぜそう思われているかと言えば、言い間違いや物忘れが多いから。6月にコロナで12万人の死者が出ていることを「1億2000万人が亡くなった」と失言。これではアメリカ人の2人に1人が死んでしまっていることになる。さらには発言している地名を言い間違えたり、自身が副大統領として仕えたオバマ氏の名前がなかなか出てこず、「ボス」と言い繕ったりする一幕もあったという。確かにそれではなあ、というレベルなのだ。

「バイデン氏に関する報道では、4月に性的ハラスメント疑惑が持ち上がったこともありました。かつてバイデン氏のスタッフだった女性が告発の動きに出たからなんですが、事件につながる行為があったとされるのが1993年段階の話なので“今さら感”は否めず、告発にいたる動きの陰にはトランプ陣営の思惑もあったのかもしれません」(前出・全国紙記者)

 長い大統領選ではこのように、敵失、誹謗中傷、ネガティブ・キャンペーンを含めた情報戦で候補者の支持率を奪い合うシーソーゲームが行われるのが常だ。

 バイデン氏のマイナス要素で言えば、つい先日に黒人人気ラッパーのカニエ・ウエストが大統領選への出馬表明したことはトランプ氏に有利に働くとの見方もある。以前はトランプ氏と友好関係にあったことで知られるカニエには、テスラ・モーターズCEOのイーロン・マスク氏らが熱烈な支持を表明しているものの、「反トランプ」「黒人支持」の民主党票が割れれば敵に塩を送ることになるからだ。

(猫間滋)

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