プロ初勝利!広島ドラ1ルーキー森下暢仁の強さを支える母校・明大の教え

 広島のドラフト1位ルーキー・森下暢仁投手がプロ初勝利を挙げたのは6月28日の中日戦だった。9回1アウトまでは零封、その後に失点し、「あと1人」のところで完投勝利を逃したが、強いインパクトを残し、佐々岡真司監督も「勝ったということで前向きにいってほしい」と今シーズンの活躍に期待を寄せた。

「広島は救援陣に一抹の不安があります。9回表、森下に打席がまわってきました。8回裏のマウンドを終えた時点で森下は『代打が出て、最後は他の投手が…』という思いが心のどこかにあったのかもしれません。プロ初勝利が、失点して降板という形になったのがちょっと残念でした」(プロ野球解説者)

 そんな手厳しい声も聞かれたが、それもシーズンを通して先発ローテーションを託せる投手だからだろう。森下の強さは最速155キロの速球でもなければ、多彩な変化球でもない。「体調管理」にあるという。

「先輩投手たちに疲れを残さないためのトレーニング法や食生活についていろいろ聞いています。森下自身、スポーツ科学に興味を持っているようです」(球団関係者)

 そのきっかけはプロ初登板後に「改善点の助言」を仰ぐため、電話連絡を入れた母校・明治大学野球部の前監督の善波達也氏にあったという。善波氏は捕手として、大学、社会人でも活躍し、2008年に明大監督に就任した。そのときに入学してきたのが、野村祐輔だった。しかし、善波氏はその野村を熱中症でダウンさせてしまった。体調管理の重要性を痛感し、練習メニューの見直しを急いだ。

「森下は明大入学後、4年生の柳裕也(現中日)と同部屋になりました。柳から練習に取り組む姿勢を教えられ、森下自身も主将でもあった柳のチームを牽引する力に惹き付けられました」(前出・球団関係者)

 森下が並の新人とは違い、体調管理に厳しいのは善波氏の指導、学生時代に接した先輩たちの影響を受けたからだろう。

「善波氏は昨季で明大監督を退きましたが、すぐに日本高野連の技術・振興委員に招かれました」(アマチュア野球担当記者)

 通常のスポーツ組織の技術委員というと、技術的なレベルアップに取り組むもの。しかし、高野連のそれは、競技力向上ではなく、主な取り組みは怪我の防止や体調管理となる。甲子園大会が行われる度に指摘されるのが、熱中症のリスクだ。熱中症予防の指導経験から、善波氏はまさに適任といえよう。森下が夏バテ知らずの投球で先発ローテーションを守りきったら、高校野球界にも大きな影響を与えそうだ。

(スポーツライター・飯山満)

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