コロナ危機でもっとも打撃を受けている業界のひとつ、飲食業。徐々に自粛規制が解かれつつあるが、先行きは明るくない。頼みの綱となるのが行政からの各種助成金。厚生労働省の実施する「雇用調整助成金」、経産省の実施する「持続化給付金」、その他各自治体の行っている融資制度など、様々な補助金・助成金がある。だが、こうした助成金の類で必ずといって問題化するのが「不正受給」だ。
今回、明るみになったのは、コロナ関連の助成金ではないが、参考として)最近起きた飲食店の不正受給のケースを見てみよう。
5月15日、兵庫労働局は雇用関係助成金を不正受給したとして、喫茶店の店名と事業主の実名を公表した。助成金の種類は、非正規雇用従業員の待遇改善を目的としたキャリアアップ助成金。当店はキャリアアップの訓練を全く実施しないままに受給を申請したという。提出書類を作成したコンサルタントも詐欺罪で起訴されている。
「5年ほど前に開店してからは人気もあったようですが、経営が苦しかったのか、まったく実体のない出勤簿や訓練日誌などを提出し、およそ200万円を不正受給したことが発覚。すでにお店は閉店していますが、労働局はこれまでの慣例に従って実名の公表に踏み切ったようです」(社会部記者)
不正受給について、法人コンサルタントに話を聞いた。「自営業者の中には、提出書類を少しぐらい書き換えても問題ない…と思っている方もいます。バレないと高を括っているようですが、露呈する契機は思っている以上にいろいろとあります。提出書類の矛盾点を突かれてという場合もありますし、抜き打ち調査や従業員への内密なヒアリングからという場合もあります。関係者がメールでの告発というケースもあります。ペナルティも軽くはありません。助成金の返還はもちろん、延滞金や受給金額に合わせた罰金も上乗せさせます。さらに事業所名や代表者指名が公表されます。悪質と判断された場合は刑事告発もあります。リスクを考えると、割に合うとは思えません」
東京都では、店舗を休業したり営業時間の短縮に協力した飲食店などを対象に1店舗あたり最大100万円(第1回と第2回を含む)の「感染拡大防止協力金」の給付をアナウンスしている。申請書類には、実際の営業時間を書き込む欄があるが、都内の飲食店経営者は「書類はいくらでもごまかせる。ある居酒屋では表向きは夜8時までの営業ということにして、店の照明を落としてこっそり“闇営業”する店もあった。そんな非協力的な店でも都からもらえる金が同額というのは納得できない」と愚痴をこぼした。
不正受給のペナルティについて東京都のサイトでは「協力金を返金するとともに、協力金と同額の違約金を支払う」と記されているが、事業主などの公表などについては明記されていなかった。
政府や自治体による援助は確かに必要だが、もともとは国民の税金。「不正受給」にはしっかりと監視の目を光らせてほしい。
(オフィスキング)