5月14日、60年以上の歴史を持つ企業の倒産がいっせいに報じられ、各界に衝撃が走った。玩具用のゴム風船や宣伝用のオーダーメイド風船などを販売していた東京・墨田区のゴム製造業者「マルサ斉藤ゴム」が4月6日、東京地裁に破産を申請していたもの。この報せに、全国の野球ファンが大きな不安を感じているという。
「野球で風船と言えば、プロ野球で定番の応援グッズとなった『ジェット風船』が有名。ラッキーセブンとなる7回の攻撃前に地元ファンが一斉にジェット風船を飛ばす光景はもはやおなじみです。プロ野球ではパリーグの全球団とセリーグの阪神、広島、DeNAが公認していますが、その人気応援グッズがいまや風前の灯火だというのです」(スポーツライター)
風船は口で膨らませることから、ジェット風船が“飛沫感染”の温床になるとして、2月のオープン戦では使用禁止に。たとえ新型コロナウイルスの感染拡大が終息したとしても、インフルエンザや通常の風邪も含むウイルスが世の中から完全に消滅するわけでもなく、ジェット風船は永久に使用禁止になるとの観測も根強いようだ。
ゴム風船の業者にとっては死活問題だが、感染防止の世論には抗えないのもまた事実。そしてこの“ジェット風船禁止”を<やっとこの日が来た!>と歓迎する野球ファンも少なくないのだという。
「プロ野球ファンのなかにはジェット風船を嫌っている層も少なくありません。元々は1985年に阪神タイガースが日本一になったころから広まったので、当初はアンチ阪神ファンの間から《やめろ!》との声が多くあがっていました。しかし他の球団にも広まるようになると、《試合そっちのけで風船を膨らますのは本末転倒》《他人のツバがついた風船が落ちてくるのは本当に不快》《円滑な試合進行の妨げになる》といった反対意見も目立つようになったのです。野球関連のネット掲示板では『ジェット風船やめろ!』というスレッドが立つのはもはや定番となっており、その願いが新型コロナで実現するのであればなんとも皮肉な出来事と言えるかもしれません」(前出・スポーツライター)
ジェット風船に限らず、これまでは当たり前だと思っていた光景が、コロナ禍の後では消え去っていくケースは増えていくのかもしれない。
(北野大知)