一人の医師の告発が波紋を呼んでいる。
5月7日に放送された「グッド!モーニング」(テレビ朝日系)において、取材を受けた心臓外科医の男性が放送当日、自身の意図とはまったく真逆の意見を述べているように編集されてオンエアされたとSNSで告発したのだ。テレビ誌の記者が解説する。
「番組の内容としては、緊急事態宣言の期間延長を受けて、『新型コロナウイルスのPCR検査を増やすべき』との論調を展開。しかし実際に取材を受けた医師の男性は『いたずらに増やすべきではない』という考えを持って取材を受けたようです。ところが、番組サイドは最初から“結論ありき”でVTRを作り、医師のコメントを編集。都合のいい部分だけを切り張りするような“捏造編集”で、視聴者が見たら、あたかもその医師が『PCR検査を増やすべき』と主張しているように映る内容でした」
放送された番組を見ていちばん驚いたのは当の男性医師だろう。ベルギーの大学病院に勤務し、現在は一時帰国中だった医師は、SNS上でこのようなメッセージを発信した。
《PCR検査に関してはこれから検査数をどんどん増やすべきだというコメントが欲しかったようで繰り返しコメントを求められましたが、私は今の段階でPCR検査をいたずらに増やそうとするのは得策ではないとその都度コメントさせていただきました》
実際にオンエアされた映像を見ると、「警鐘 欧州帰りの医師が見たコロナ対策『日本の遅れ』」というテロップのもと、「欧州でのPCR検査は日本よりかなり多い」とする部分だけが使われたことで、《PCR検査を大至急増やすべきだ!というメッセージの一部として僕の映像が編集され真逆の意見として見えるように放送されてしまいとても悲しくなりました》と心情を吐露している。
すでにこの騒動はネット上でも話題となっており、「これはさすがにひどい!テレビ朝日は謝罪すべき」「せっかく取材に応じてくれた医師の気持ちがぜんぜんわかっていない」などと辛らつなコメントが見られた。
医師が本当に発信したかったのは、以下のような、医療従事者が直面している惨状と、医療現場への行政サポートの必要性だった。
《家族などへウイルス感染を持ち込んでしまうことを恐れて1人病院に泊まったり、病院の近くにホテルやマンションを借りて自主的に隔離をしているスタッフも知っています(もちろん自腹です)。愛する家族子供とも会えずに、身体的精神的な負担だけでも計り知れないのに、金銭面な負担までのし掛かるのは本当に残酷でしかありません》
こうした切実な訴えと“捏造編集”に注目が集まるなか、番組はどんな対応を見せたのか。5月8日、渦中の「グッド!モーニング」は騒動などまるでなかったように平常進行。謝罪はおろか、この話題に触れることもなかった。そればかりか、同番組の後に放送された「羽鳥慎一モーニングショー」でも捏造疑惑が浮上したというからタチが悪い。
「この日、番組では自民党本部で行われた経済対策の会合を取り上げ、多くの議員が集まっている状況を『3密だよ!』と取り上げたのですが、問題はこの映像とともに流れた『これちょっと3密だよ、これ!』と叫ぶ音声です。この報道に異を唱えたのが、自民党の和田政宗参議院議員でした」(政治部記者)
同議員は自身のツイッターで《テレビ朝日「モーニングショー」でまた事実誤認の放送》としたうえで、《議員からも「ちょっとこれ3密だよ」と声が挙がったと、この音声込みで紹介したが、これは私の前に座っていた議員が、会議室内で密集していたメディア記者達に対し発したもの》と暴露している。
未曽有のコロナ禍が、その報道姿勢を浮き彫りにしたようだ。
(倉田はじめ)