「岡江さんを助けられなかった」医師の慟哭と“コロナ感染病院”の阿鼻叫喚

「岡江久美子、コロナ死」の衝撃が日本を縦断する中、各地の病院で感染爆発の連鎖が止まらない。新型ウイルスはいかにして院内を支配し、他の医療機関へと伝播していったのか。増え続ける重症患者と死者を前に、医療従事者たちから阿鼻叫喚が聞こえてくる。

 志村けんに続き、4月22日早朝、女優・岡江久美子が63歳で急死した。新型コロナウイルスの肺炎によるものだった。

 2人に共通するのは、わずか数時間で容体が急変したことだ。午前中には所属事務所のスタッフとも言葉を交わしていたのが、数時間のうちにみるみる悪化、意識不明となって病院に搬送された。人工心肺が装着され、懸命の集中治療が行われていたが、再び目を覚ますことはなかった。

「治療に携わるスタッフは、勤務時間中はトイレや食事もままならない。一瞬たりとも気の抜けない処置に加え、岡江さんという有名人の命を預かることにも重責を感じていました。文字どおり、自身の死への恐怖もそっちのけで、全身全霊で治療に当たっていたのに、岡江さんを助けられなかった。このことに、激しいショックを受けているようです」

 美人女優が入院、加療を受けていた病院の医師はそう語り、慟哭する。

「岡江さんという有名人だから、というわけではありません。全国の医療機関で重症患者を治療する集中治療室の医療スタッフが今、同じ無念さと無力感にさいなまれています。重症患者が危機を脱して集中治療室を出ても、1時間後には、新しい重症患者さんが運び込まれてきます。全てのベッドが一瞬も気の抜けない、死の淵から連れ戻さねばならない重症患者さんで埋まっているのです。首都圏の感染症病棟と集中治療室は、ダイヤモンドプリンセス号の入港以来、そんな状態がずっと続いています」

 軽症もしくは無症状で済む人が多いものの、いったん発症すると、そこからの進行がきわめて速い。風邪の症状や倦怠感といった、ごくありふれた症状を訴えていた人が数時間後には激しい息苦しさを訴え、意識がなくなるという。その症状は、一般的な肺炎とは異なる激しいもので、

「息を吸うたびに、肺にガラスの破片が突き刺さるような激痛を覚え、苦痛のあまり、息ができなくなる。その激痛、苦痛に耐えられず、そして体力を消耗し、患者はしだいに呼吸をやめてしまうのです」(前出・医師)

 この激烈さこそが、新型肺炎が世界中を恐怖のドン底に陥れているゆえんだ。

 東京都台東区にある永寿総合病院で起きた爆発的な院内感染は、テレビニュースやワイドショー、新聞などで連日、大きく報じられた。院内感染患者は200人を超え、4月23日現在で30人の入院患者が新型肺炎で死亡している。この院内感染はその後、さまざまな病院に波及し、東東京エリアでは救命救急が麻痺寸前に陥っている。

 永寿総合病院は浅草と上野の間に位置する下町の地域拠点病院。厚生労働省のクラスター(感染集団)研究班は「今回の院内感染は、屋形船の感染者とフランスからの帰国者までたどれる」と発表した。つまり、東京の医療システムが破綻寸前にまで陥った感染拡大の元をたどると、中国人観光客を乗せたタクシー運転手たちが屋形船で開いた新年会と、フランスからの帰国者のウイルスのどちらかが病院職員や入院患者、外来患者に蔓延、拡散していったと結論づけられたのだ。

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