競争激化のデリバリー業界、新型コロナ「鎮静化」でどう変わる? 

 今や街を歩けば四角いリュックを背負った人を見るのも日常風景化した。「ああ、フードデリバリーのスタッフだ」と。

 昨年10月の消費税率引上げに伴う軽減税率の導入もあって、フードのテイクアウト・デリバリーの需要と市場は急拡大している。UberEatsが東京でサービスを開始したのが2016年9月。デリバリー市場は2018年実績で4000億円超、前年比約6%の増加だが、街の風景を見れば2019年そして2020年の第一四半期は急拡大していることが窺える。

 そして3月26日、デリバリー業界大手が手を組んだ。LINEとフードデリバリーの「出前館」が資本業務提携を発表、LINEのグループがファンドを通じて300億円を出資すると発表したのだ。LINEと「出前館」はすでに「LINEデリマ」を共同で運営しているが、今回の提携でブランドは「出前館」に統一し、デリバリーの申し込みに必要なIDを「LINE ID」に統一することにした。

 時に、街の風景は一変した。不要不急の外出を控える人が増え、夜の街で人混みを見る機会は激減した。一方、代わりに目につくのが、大きな四角形のデリバリー・リュックを背負った配達スタッフだ。飲食店でも「テイクイン」ではなく、「テイクアウト」を選ぶ客が多い。

「もちろん、軽減税率に加え、新型コロナウイルスの『巣ごもり』需要の影響ですが、このタイミングでの行動パターンの変更は、今後さらに日本人の中で一般化して消費行動も変化、市場は拡大するでしょう。2018年段階ではデリバリー市場の約45%は主要7社が占めていましたが、今後は、先行して『デリバリー』のイメージを植え付けた外資のUberEatsと、従来からあった『出前』の延長線上のイメージの国内組の2極で業界が統合されていくかもしれません」(経済ジャーナリスト)

 店舗サイドでも今回の新型コロナウイルス騒動も手伝って、テイクアウト・デリバリーのサービスを開始する店が増えるだろう。

 日本マクドナルドは3月11日から、マックのクルーが利用客の玄関先のみに商品を届ける「非接触マックデリバリー」(1500円から。利用料は別途300円)を“当面の間”実施しているが、この手の対面を欠いたサービスは特にデリバリーでは定着しやすい。ニーズが高まれば、飲食サービスでテイクアウト・デリバリーのサービスがより定着するだろう。

「そんなニーズを時代の変化と捉えて、これを応援する自治体も増えています。水戸市や仙台市はテイクアウト可能な店舗の情報を紹介するサービスを始めていますし、また、つくば市や別府市ではハッシュタグを活用したテイクアウト・デリバリーが可能な店舗情報の発信に努めています」(前出・経済ジャーナリスト)

 また、テイクアウト利用アプリを提供する各社が情報を共有してSNSで拡散させたり、テイクアウト・デリバリーを代行するサービスも登場しているという。

 といったように、あらゆるサービスが百花繚乱して業界の生き残り競争激化は必至。「外食」の概念が曲がり角にさしかかっているのかもしれない。

(猫間滋)

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