新型コロナ「パンデミック」戒厳令(2)「実際の感染者数は公式の10倍」

 厚労省のシナリオでも、「国は相変わらず最悪の事態を想定していない」と指摘するのは、感染症専門医だ。続けてもらおう。

「実はこの厚労省のシナリオは、まったく具体性に欠けている。市中感染が始まってから3カ月後が国内の流行のピークだと書かれているのみで、それがいつ頃になるのか具体的な時間軸が明記されていない。あとからどうとでも改変できるシロモノです」

 全国の感染症を監視し、大阪のライブハウスの感染者集団(クラスター)を調査した国立感染症研究所では「自治体が挙げている数値よりも、実際の感染者数は数倍以上に上る」と言及しているほか、シナリオを作成した当の西浦教授自身ですら、CNNの取材に対し「実際の感染者数は公式統計の10倍」「北海道内の感染者数は症状の出ていない若者の陽性患者を含めたら940人以上の感染者がいる」などと発言をしているほどなのだ。

 現在のイベント自粛や全国一斉休校は医学的根拠や現状の患者数をベースに決まったわけではない。安倍総理が専門家の意見も聞かずに独断で決めた措置にすぎない。政府は、イベント自粛や全国一斉休校で、感染のピーク抑制や感染者数を減らす効果があるとだけ説明しているが、実際のところ検証しようがないというのが実情なのだ。先の感染症の専門医も警鐘を鳴らす。

「2002年に起きたSARS(重症急性呼吸器症候群)は感染者数が8400人でしたが、終息までに9カ月かかりました。中東を中心に2012年に流行したMERS(中東呼吸器症候群)は患者数が2500人足らずですが、現在も流行が終息していません。SARSやMERSに対し、今回の新型肺炎は南極大陸以外の全大陸に広がり、感染者数は10万人を突破しています(3月13日現在)。コロナウイルスは一般的に感冒症状や下痢を起こす冬のウイルスです。夏には別のウイルスにとって代わられるのですが、今回は南半球のオーストラリアやニュージーランドで感染が広がっているので、たとえ日本が夏を迎えても、冬を迎えた南半球で患者が増えると地球規模での感染拡大が止まらないおそれがあります」

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